憑依一体
「憑依一体」
染井 茜了
小夜 サヨ (享年18)
大和 ヤマト(19)
詩織 シオリ(20)
和望 ナゴム(享年17)
1. 見えてるからね。(公園)
音響、照明卓が、舞台上手側にあると嬉しい。※本作品は、和望役が音響照明をしながら演者をする前提で書いております。この設定は、演じやすいよう変更していただけますと幸いです。
公園。
舞台下手から小夜、登場。
どこか緊張した面持ちで舞台上を歩き回り、上手側で立ち止まる。
しかし、まだ落ち着かない様子。
舞台下手から大和、登場。それに気づいた小夜、何か言いたげに大和に駆け寄る。
舞台上手から詩織、登場。
詩織に気づいた大和、小夜には目もくれず詩織に駆け寄り、楽しそうに二人談笑している。
寂しげにそれを見つめる小夜。
詩織と大和、そのまま上手に退場。
小夜、しばらく二人を見送るが、やがて後をついて上手に退場。
詩織と大和のデートシーンを数パターン繰り返す。(相合傘、イヤフォンはんぶんこなど)それを小夜が見守る。回を重ねるごとに、小夜の距離が近づいていく。最後のデートで詩織と大和、客席ごと写し込むように自撮り、それに小夜も勝手に映り込む。
大和 「ちょ、トイレ」
詩織 「遅かったら、置いてくからね~。」
大和、トイレにハケ。ついていこうとした小夜の肩を詩織が掴む。
詩織 「いやさすがにトイレは駄目でしょう。」
小夜、自分じゃないと思い、詩織の目線の先を追う。
詩織 「どう考えてもあなたに話しかけているでしょ。」
小夜、自分の顔を指差す。
詩織、頷く。
小夜 「見えているんですか!? 」
詩織 「はい。」
小夜 「いつから!? 」
詩織 「最初から。今、トイレ覗きに行こうとしたのも全部見えてるからね。変態。」
小夜 「変態じゃないです! 」
詩織 「じゃあなんでトイレについていく必要があるの? 」
小夜 「いや、男子ってどんなってするのかなー?って」
詩織 「変態じゃん。」
小夜 「っていうか! 見えてるならなんで最初から教えてくれないんですか!? 」
詩織 「いや、害なさそうだし大丈夫かなーって」
小夜 「軽いですね。」
詩織 「いや、正直最初は焦ったよ? あんまりはっきり見えるから人間のストーカーかと思ったら、大和には見えてないみたいだし、私がおかしいと思われたら嫌だから、とりあえず様子みようかなって」
小夜 「へえ、そんなにはっきり見えてるんですね。」
大和、トイレから入り。
大和 「シオリ、次どこ行く? 」
小夜、呆けた表情で大和を見つめながら、小さい声でぶつくさ大和を褒めちぎっている。
詩織、小夜を一瞥し、ため息を吐く。
詩織 「ごめん。予定はいちゃった。」
大和 「は? 今日一日空いてるんじゃないの? 」
詩織 「そうなんだけど、友達から今すぐ相談したいって連絡あって。」
大和 「……いや、意味わからないんだけど。」
小夜、変わらず小さい声でブツブツ言っている。
詩織、苛立ちが態度にでないように気をつけながら大和と会話を続ける。
詩織 「なんかすごく深刻な相談みたいでさ。幽霊みたいな顔で見てるから。」
大和 「見てる? 」
詩織、小夜を睨む。気づかない小夜。
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