ブレイカー爺


  爺  (じい)
  死神 (しにがみ)
  セシリア


■■■

  舞台中央にベッド。
  その上に腰掛ける爺、そしてその隣に佇む死神。
  爺はステテコ姿に杖、死神は黒い服に身を包んでいる。

爺   さぁ、勇者ヤマトよ! その手で魔王を倒すのじゃ!
死神  ……。
爺   ……。
死神  …俺!? 俺か!?
爺   怖じ気づいたか勇者ヤマトよ。
死神  いや勇者でもヤマトでもねぇよ。
爺   我を見失ったか。
死神  失ってない、失ってないよ。
爺   勇者タカシよ!
死神  名前変わってる!
爺   現実から目を背けるな。おぬしのその右手に世界の命運がかかっておるのじ
    ゃ!
死神  はぁ…、
爺   その左手に!
死神  なんで変えた?
爺   しかと前を見よ! 見続けろ! その先には、何かがある!
死神  何か…、
爺   落ち着いて、その目を凝らすのじゃ。何が見える。おぬしの目は何を捉え
    た!
死神  えと…明るい未来、とか…?
爺   そうか、わしにはお客さんが見える。
死神  見るな!
爺   (指差しながら)わしら見られとる!
死神  指を指すな! 指を!
爺   (客に)ご来場頂き誠にありが(とうございます)
死神  話しかけるな! ここ、壁! ここには壁があるの!
爺   …あぁ!
死神  そう。
爺   なるほど。
死神  そうだよ。
爺   そう言う設定か。
死神  設定とか言うな!
爺   設定と言えば、殺風景でわからんとは思うが、実はここ、魔王の城なのじゃ
    よ。
死神  意味のない嘘をつくな。なんで魔王の城のど真ん中にベッドがあるんだよ。
    ここは病院、あんたは入院してんの。
爺   あーあー説明しおった。ついに説明しおった。そこは話の流れで想像させる
    もんじゃろ普通。
死神  誰のせいだよ…。
爺   さて、勇者ディランよ。
死神  名前は統一しろよ。そもそも勇者じゃねぇし。
爺   勇者じゃない? 勇者じゃない!? じゃあ、おぬしは一体、誰なのじゃ!

  死神、待ってましたと言わんばかりに。

死神  ふん、訊かれちゃあしょうがない。俺は死神、あの世からあんたを迎えに来
    たのさ!
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