走れ、メロス
~ディオニス王とセリヌンティウス~
  走れ、メロス 
     〜セリヌンティウスとディオニス王
〇参考文献:新潮文庫 「走れメロス」 太宰治作 
〇舞台:下手側には牢番がたむろするスペースがあり、真ん中あたりにテーブル1つとイス
    2脚、左手の壁側には簡易ベッドとしても使われる長椅子と簡素な棚がある。
    その奥には地上への階段に続く大きな扉が見える。テーブルの上にはコップが2つ
    置かれている。
    上手側には鉄格子で仕切られた牢があり、その中には粗末な椅子がぽつんと置かれ
    ている。
    ※鉄格子に関して実際に置く必要はなく、イメージで。牢屋であるとわかるような形
    になっていればよい。

〇登場人物・・・男4、男女どちらでも可1、(女1)
 ※王妹は声のみなので、録音した音声でも可能。
・牢番A
・牢番B
・セリヌンティウス:メロスの親友で石工
・ディオニス王:人を信じることができない暴君
・フイロストラトス:セリヌンティウスの弟子の少年
    ※男女どちらでも可
・王妹:ディオニウス王の妹 声のみ
    ※少女期と成人後の声を一人が演じ分けるのが好ましいが、別人が演じてもよい。


プロローグ 
      幕は閉めたまま。音声、SEのみ。

王(声) :戻ってくるはずがない。そうとも、逃げた小鳥は戻らぬものだ。

      SE:吹きすさぶ風。廊下に鳴り響く足音。

王(声) :ましてや、人間が、己が自由を、生を、自ら手放すはず
がない。わかっているぞ。お前の魂胆は。あえて策にハマってやるのも一興か。

      どこからともなく聞こえてくる幼い少女(王妹)の声。
   
王妹(声):泣かないで、兄さま。どうか、泣かないで。

      声は徐々に大きくなる。

王妹(声):私がいる。私がずっとそばにいるわ。約束する。だから、大好きな兄さま、
       泣かないで。
王(声) :だまれ。
王妹(声):私がそばにいるから。父上や母上の分まで。
王(声) :だまれ!だまれ、幻聴め!
王妹(声):これからは二人で頑張りましょう。私はいつだって兄さまの味方よ。
王(声) :嘘つきめ。お前は裏切ろうとしたではないか。
王妹(声):(急に大人の女性の声になって悲しそうに)兄上、なぜ信じてくださらぬの
      です?
王(声) :黙れと言うに!お前たちも王位が欲しかったのだろう?
      自分たちこそ王位にふさわしいと思ったのであろう?
王妹(声):全くの濡れぎぬでございます。謀反など企ててはおりませぬ。兄上、どうか、
      どうか信じてくださいませ。
王(声) :黙れ!黙れ!

      SE 王笏を床にたたきつける音。荒い息遣い。

王(声) :このディオニス、死人のたわごとなどに負けはせぬ。負けはせぬとも。

      SE 再び吹きすさぶ風と足音。
1/14

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム