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【朗読】雪の日の覚醒

雪の日の覚醒

作／保邑リュウジ

《登場人物》
押切芽生
宝生来夢
宝生千鶴子

ＳＣＥＮＥ１

明かりが入ると、芽衣、来夢、千鶴子が座っている。

芽衣　あなたが今日から入るのね。ちょっと待っててくれる？安藤さん、追加分の発注してくれた？そう、急いでね。あと、団体さん二組入るから、テーブルの準備宜しく。…ごめんなさい。じゃあ、こっちに来て。
来夢　忙しそうですね。
芽衣　これでも、コロナ前よりはまだ少ないんだよ。だいぶ戻ってきたけどね。まだ私の名前言ってなかったね。店長の押切です。宜しくね。前は名前が芽衣だから、「めいさん」って呼ばれてたけど、店長になったら呼ばれなくなって、ちょっと寂しいかな。
来夢　宝生来夢です。宜しくお願い致します。
芽衣　来夢さんか。「らむ」か「らいむ」で迷ってたけど。
来夢　自分的には、どっちでもいい感じです、正直言って。
芽衣　じゃあ、ライムちゃんね。もう、今日から出られるの？
来夢　はい、大丈夫です。
芽衣　今日は他の人について、仕事の大体の流れを教えてもらってね。本格的には、明後日からかな。ちょうど人がやめちゃったところだったから、助かるよ。
来夢　頑張って、早く戦力になれるようにします。
芽衣　期待してるよ。…あれ？最寄り駅が私の一駅先だ。
来夢　同じ線なんですか？
芽衣　うん、そうだね。ちょっと親近感が湧いた。うちの店で、あの線使ってる人っていないから。ねえ、どうしてこの店にしたの？
来夢　えっ？
芽衣　いや、私もそうだけど、わざわざここじゃなくなって、地元にも居酒屋あるでしょ。あと、沿線にも。
来夢　どうして、ですかね。
芽衣　私の場合は、近くの店がどこも人をとってなくて、たまたまここに応募したら受かったって感じ。一回乗り換えだから、ま、いっかって。
来夢　最初は、バイトだったんですか？
芽衣　そうだね。お金稼ぎたかったから、目一杯シフト入れてたら、その当時の社員の人から呼ばれて、社員にするから店長にならないかって。
来夢　仕事ができたんですね。
芽衣　いや、過労死レベルでシフト入れてたから、こいつは都合良く使える、って思われただけじゃない。
来夢　そうなんですね。
芽衣　来夢ちゃんは、そこまでしなくていいからね。死なれちゃ困るし。
来夢　私も、できれば目一杯入りたいんです。お金が必要なんで。
芽衣　分かった。シフト作る時考慮するよ。
来夢　有り難うございます。宜しくお願いします。
芽衣　あ、そうだ。これ、もらっておいて。
来夢　何ですか、これ？
芽衣　フライヤー。私が出るんだ。
来夢　歌われるんですか？
芽衣　うん、よかったら来て。オリジナルはないけど、アニソンとかボカロのカバーを中心に歌ってる。
来夢　是非見に行きたいところですが、お恥ずかしい話、お金が厳しくて…
芽衣　いいよ、ご招待にするから。
来夢　それは申し訳ないです。
芽衣　いいから。その代わり、絶対来てね。
来夢　有り難うございます。絶対行きます！

ＳＣＥＮＥ２

来夢　ただいま。
千鶴子　おかえり。どうだった？

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