アイドルになりたいっ!
CAST
①福森美夜(ふくもりみや)17歳。女子高生。アイドルを目指している。
②遠藤沙織(えんどうさおり)17歳。女子高生。美夜の親友。美夜の夢を応援しているが、実は自分もアイドルを目指している。
③福森ミノル(ふくもりみのる)40歳。美夜の父親。シングルファザー。
セット→団地住まい 福森家のリビング。ダイニングテーブルと椅子。3人の座る位置はご自由に。
開演
美夜と沙織 座ってコソコソと話している。
美夜「じゃあじゃあ、お父さんがトイレから戻ってきたら話を切り出すからね。そのあとは、練習したときの流れでお願い!」
沙織「おっけー。ばっちり上手くやるから安心して任せなさい!」
美夜「ほんっと沙織がいてくれて心強いよー。あたしひとりじゃ、絶対に説得できないもん。」
沙織「そりゃあ、娘が突然「アイドルになりたい!」って言い出したら「は!?」ってなるよ。今までそういう話をしてないんだし。」
美夜「だよねえ。なんかさー、離婚してから毎日忙しそうで……話せる雰囲気じゃなかったんだよね。本当は色々相談したかったんだけど…。」
沙織「ーーそっか。」
美夜「(空気を変えるように)あ、でもね。そんな仕事一筋のお父さんに、最近良い人が出来たみたいなんだよ。」
沙織「えー!?うっそー!」
美夜「しーー!ちょっと聞こえちゃうっ。」
沙織「ごめん、ごめん。」
美夜「真夜中にコソコソ電話なんてしちゃってさ。あたしも高校生になったことだしさ、そろそろ再婚も考えているんじゃないかなぁ。」
沙織「……美夜は、それでいいの?」
美夜「いいも何も大賛成だってば。ずーっと男手一つで育ててくれたんだもん。そろそろ自分の幸せを掴んでほしいよ。」
ミノル トイレから戻ってくる。
ふたりともハッとして、姿勢を正す。
ミノル「はぁ……。」
ミノル なぜか神妙な顔つき。
美夜「……遅かったけど、どうしたの?」
ミノル「ふたりとも。今から、ものすごいことを言ってもいいか。」
沙織「……ど、どうぞ?」
ミノル「この世のものとは思えない、でっかいウンコが出た。」
ミノル にっこり笑ってピース。
美夜「最悪!!」
沙織「ピースやめろ!」
ミノル「めちゃくちゃファブリーズしたけど、怖いからあと15分くらいは入らないでほしい。出来れば、下の階の山田さんにトイレ借りてほしい。」
ミノル そそくさと着席。
ミノル「いやー、久しぶりにお腹の中がすっきりしたー。(一口、お茶を飲む)それにしても、2人がうちで遊ぶなんて珍しいじゃないか。いつもは隣町のショッピングモールに行っているのに。」
美夜「ああ、ーーうん。」
沙織「ちょっと、ね。」
ミノル「なんだよ、目配せなんかして〜。」
美夜「コホン。……あたし、お父さんに話さなきゃいけない大切なことがあるんだ。」
ミノル「お、おう…。そうなのか?」
美夜「(一息 置いてから)お父さん。
あたしね、『アイドルになりたい』の!」
リビングがシーンとなる。
ミノル「ーーア、アイドル?」
美夜「実は、半年前、このオーディションに応募したんだ。」
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