新編:銀河鉄道の夜
池塘春草の夢
原作:宮沢賢治作 「銀河鉄道の夜」
翻案:栗原まろん

◆登場人物
・子供ジョバンニ…ジョ
・大人ジョバンニ…ジ大
・カムパネルラ…カム
・鳥を捕る人…鳥捕
・学者…学者
・青年…青年
・ザネリ…ザネ
・マルソ…マル
・カトウ…カト
・車掌…車掌
・先生(影マイクor録音)…先生
※マルソ、カトウをまとめて一味と記載している箇所あり





   舞台中央に大人ジョバンニ
   墓に添える花を持ち、登場

ジ大「夢の中で『これは夢だ』と気がつくと、自由に動けるようになることがあります。この現象には、明晰夢という名前がついています。明晰夢自体は誰にでも起こる可能性がありますが、常に起こるわけではありません。ではどのような条件下で起こるのか、また意図的にそれを見ることは可能なのか。これはまだ、科学的に証明されていません」
ジ大「僕がなぜ夢に詳しいかというと、大学で夢についての研究をしつつ、人にものを教える仕事をしているからです。今日は僕の親友で、僕が夢について学ぶきっかけにもなった人に会いに来ました」
ジ大「この花も、彼に渡すためのものです」
一味「ケンタウルス、露を降らせ!ケンタウルス、露を降らせ!」
ジ大「……今日はケンタウル祭か」

   大人ジョバンニ、墓に花を供えながら

ジ大「そうだ。ひとつ昔話をしましょう。僕についての話です。でもその前に、彼とも少し話がしたい」

   大人ジョバンニ、手を合わせる

ジ大「ねえ、カムパネルラ。僕たちひさしぶりに会ったねえ。もうあれから随分経ったよ。僕もかなり歳を取った。大学で人にものをおしえているんだよ。教授なんて呼ばれたりして」
ジ大「……そうだ、君にも話を聞いてもらおう。僕の、不思議で素敵な旅の話を。うーん、題名は……そうだなあ……『銀河鉄道の夜』」

   SE 汽笛
   明転(学校)
   前向きに座るジョバンニとカムパネルラ

ジ大「その日は、街で一番大きなお祭り、ケンタウル祭の日でした。僕はいつも通りに教室で授業を受けていました」
先生「ではみなさんは、そういうふうに川だと言われたり、乳の流れたあとだと言われたりしていた、このぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか」

   カムパネルラ 手を挙げる
   ジョバンニ 手を挙げようとしてやめる

先生「ジョバンニさん。あなたはわかっているのでしょう」

   ジョバンニ 勢いよく立ち上がるが答えられない

先生「大きな望遠鏡で銀河をよく調べると銀河はだいたい何でしょう」
ジョ「……」
先生「ではカムパネルラさん」

   カムパネルラも立ち上がるが答えられない

先生「では、よし。このぼんやりと白い銀河を大きないい望遠鏡で見ますと、もうたくさんの小さな星に見えるのです。ジョバンニさんそうでしょう」
1/11

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム