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夫婦喧嘩は犬も食わぬ

　　　　　　　　『夫婦喧嘩は犬も食わぬ』
作・雨紫苑

��糸�岩査��

男１　　吸うタイプのドッグフードが食べたい
男２　　吸うタイプのキャットフードが食べたい
女　　　そばアレルギー

　　　　　　　　男２が座っているそばに立っている男１

男１　　なぁ、吸うタイプのドッグフードって美味しいのかなぁ
男２　　 ……は？お前何言ってんだ？
男１　　あいやだから、「吸うタイプのドッグフードって美味しいのかなぁ」って
男２　　吸うタイプのドッグフードって…あぁイナバのWanちゅ――
男１　　それ以上言うな、商品名そのままだと角が立つだろ。
男２　　　　　　あぁ悪い。で、なんの話だっけ？
男１　　だーかーらー、吸うタイプのドッグフードが美味しいのかどうかだよ
男２　　お前なぁ、アレが美味いかどうかって…美味しいに決まってるだろ。今更何言ってるんだ。
男１　　あー、やっぱりそうだよな。俺もそんな気がしてたんだよ、あれ絶対美味いんだろうなぁ…って。
男２　　もしかしてお前、一度も食べたことないの⁉まじかよお前、それ一生の半分は損してるぞ。悪いことはいわねぇ、絶対に食べるべきだ
男１　　えー、そこまで言う？確かに美味しそうとは思ってたけど、そんなに推されると逆に怖いわ。
男２　　いやいや、食えば分かる。まじで世界の見方変わるって。アレを食べた瞬間、突然周りが鮮やかになるんだよ。
男１　　そこまで変わるかよ
男２　　変わるんだってまじで。一回だけ試しでやってみろって。…ていうかさ、吸うタイプのって前に一回食べてなかったっけ？
男１　　あー、それは猫の方だな。
男２　　猫の…あー、ちゃおの方ね。あっちはどんな味だった？俺今度食べようと思っててさ。
男１　　いや、アレはダメだね。生臭くって食えたもんじゃない。猫だってよくも魚ばっかり食べれるもんだね
男２　　別に良いだろ魚食べたって。日本人だって今や肉ばっかり食べてるけどね、本来は魚がメインの民族だろ？そんなことより、今はお前が吸うタイプのドッグフードを食べたことがないことの方が大問題だと思うね。
男１　　あー悪い悪い。でもなぁ、なんとなく食事ってお皿に出して食べたいんだよ。そもそも、袋から直で吸うのって衛生的にもどうなのよ？
男２　　そんなこと言い出したら、駄菓子屋で世の少年少女が食べてる吸うゼリーはどうなるんだよ。アレと比べりゃ家で保管してるだけマシだと思うけど？
男１　　まぁ確かにそうか…。いーやでも、アレには食感がないだろ？それじゃあ味がどんなに良くても俺は認められないね。味と栄養だけを追求したディストピア飯なんて、仮に美味しくたって願い下げだよ
男２　　食感がないのがそんなに嫌なら、カリカリした普通のドッグフードと一緒に食べれば良いじゃねぇか。そんなことにも気づけないのか？
男１　　 …っ。天才…？
男２　　決まりだな。今夜のご飯は二種類のドッグフードの食べ比べだ。
男１　　よし、それなら早速夕飯の支度をしよう、今日は豪華だから早めに準備始めないとな
男２　　 …え？いやお前なにしてんの？
男１　　何？別にごはんの準備しようってだけだけど？
男２　　そうじゃなくってさ、俺らに準備なんか出来るわけ無いじゃん
男１　　は？なんでだよ。ご飯の準備くらい出来るって。そういう家事しないタイプの男は今の時代じゃ嫌われるぞ。
男２　　だからそういう話じゃなくってさ、俺ら犬なんだからそんなこと出来るわけ無いじゃんって
男１　　 …………え？
男２　　その短い前足と不安定な後ろ足でどうやってごはんの準備するんだよ。出来てせいぜい静かにお座りして待つだけだろ
男１　　いやいやいや、いやいやいやいやいや。……俺らって、犬なの？
男２　　そうじゃなきゃ逆になんなんだよ。どっからどう見てもお前は可愛いだけのチワワだろ
男１　　あ、しかもチワワなんだ。せめてゴールデンレトリバーとかが良かったな。

女　　　「ガチャッ」

男２　　おい、ご主人様が帰ってきたぞ、餌のことは一旦忘れて、とりあえずお利口にして待つぞ
男１　　え？待って待って待って準備出来てないからっ。

　　　　　　　　　　　　慌てて男２の隣に座る男１

女　　　ただいま～。疲れたぁ仕事まじで無理～～～。私の癒やしは、大納言と納豆だけだよ～。
男１　　もしかして俺の名前って納豆？
女　　　ん～どうしたの？納豆今日は元気だねぇ
男１　　やっぱりそうだ。ていうか俺らの声ってご主人様には聞こえてない感じ？

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