嗄れ蝉の点滅
演劇原稿:「嗄(しゃが)れ蝉の点滅」
登場人物
酒井:正義感が強く、鳥居のことを愛してやまない田舎の男子大学生。少し抜けている。
鳥居:酒井のことが好きだが、酒井が自分のことを好きなことをわかっているため、敢えて気づかないふりをしている。
山喜:上品な口調でしゃべるアイス売りの高校生。実は、上品な口調は意識してしゃべっており、不意に、普段の口調でしゃべってしまう。鳥居の義妹で、酒井のことが恋愛的に好き。
牛乳売りの女性:道中の小屋で牛乳瓶を売っている。生前の記憶はない。
三人の少女:誘拐された少女たちの霊。
教祖:教祖様。毒舌。年寄りのような口調で話すのがカッコイイと思っている。菅井と二人っきりになった途端に普段の口調になる。カッコつける必要がないから。
菅井:宗教施設に潜入している警察官。教祖を一歩というところまで追いつめたが、酒井が来てしまい、混乱する。真面目な警察官。
男:三人 女:六人 計:九人
あらすじ この町で起きている行方不明事件。ある日を境に彼の思い人である鳥居が行方不明になってしまう。そこで、鳥居の義妹である山喜に相談することに。酒井は山喜からとある宗教施設が行方不明事件に関与しているという噂を聞く。ひと夏の冒険、彼らに待ち受けるこの物語の結末とは。
シーン1 プロローグ
遠くで蝉の声がなっている。鳥居は白いワンピースを着ている。舞台の一段目、ベンチに酒井が座っている。徐々に明転。
鳥居 お、いたいた、待った?
酒井 いやいや全然、今来たとこ
鳥居 そっかぁ。……今日も暑いねぇ
酒井 ……あぁ、暑い
鳥居 暑すぎて溶けちゃいそうー
酒井 ……蝉もやばいよな、鳴きすぎて、声かれてんじゃん
鳥居 (くすっと笑って)…かれてる。たしかに
酒井 ……
鳥居 ねぇ、酒井
酒井 ん?
鳥居 夏ってさ……永遠に、続く気がしない?
酒井 ……永遠かぁ、まぁわかる。でも、いつの間にか、パッと咲く花火みたいに、気づいたら終わってんだよな
鳥居 ……そうだね
酒井 ……だから、ちゃんと楽しまないと
鳥居 ……うん、楽しまなきゃ
酒井 ……じゃあ、今日は何する?
鳥居 えー、どうしようかなー。酒井が決めていいよ
酒井 ……わかった。じゃあ、虫取り
鳥居 それ昨日やったじゃん
酒井 確かに、じゃあかくれんぼは?
鳥居 うーん、それ一昨日やった
酒井 じゃあ、鬼ごっこ
鳥居 それは、昨日の一昨日やった
酒井 えーもうわかんない、ギブギブ。……鳥居、俺と遊びたくないんでしょ
鳥居 あはは、そんなわけないじゃん。私と酒井がいれば、つまらないものなんてないよ
酒井 お、おう(照れる)
鳥居 わかった、虫取りでいいよ。昨日捕まえられなかったカブトムシ、捕まえに行こう!
酒井 ……なぁ、鳥居
鳥居 ん? なに?
酒井 お、俺さ!
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