親愛なる君へ捧ぐ鎮魂歌 第四番 変ロ短調
【登場人物】

 三波 蒼衣
 草柳 凛
 奥澤 瑞希





【1】
         おそらく、二月下旬から三月上旬頃と思われる。
         日が暮れて間もなく。

         三波蒼衣の部屋。
         電気は点いている。

         決して広いとは言えない一人部屋。
         窓は一つ。
         カーテンは開いていて、窓の両側できちんと束ねられている。
         家具は机、箪笥、ベッドがあるだけ。
         机の上にはCD(主にクラシック)が数枚と、
         CDプレーヤーが置いてある。多機能ではなさそうだ。
         奥のブックスタンドには、何冊も楽譜が並んでいる。
         箪笥の上には小さいポットのようなものが一つ置いてある。
         部屋の隅のほうに、そんなに大きくない段ボール箱が一つあって、
         蓋が半開きになっている。
         全体的に、かなり綺麗に片付いているほうだ。

         三波蒼衣が制服姿のままいる。
         携帯電話で誰かと会話をしている。
         口調からして、不機嫌そう。

蒼衣   違う違う、そうじゃなくて・・・えぇ、知ってます。でもしてもしなくても、
     結局は同じことなんですよね? ・・・だったらしなくていいですよ。
     ・・・そういうわけじゃないですけど、でも私、もう覚悟できてるんで。・・・はい・・・

         ドアチャイム。
         蒼衣、一瞬だけそちらへ視線を送る。

蒼衣   ・・・友達が来たのでもう切ります。・・・わかりましたよ。
     あとは親に直接お願いします。それじゃ。

         蒼衣、電話を切って机の上に放置する。
         草柳凛と奥澤瑞希が現れる。
         二人とも、制服が中途半端。
         上はブラウスなのに下はジャージ、みたいな。

凛    あれ、帰ったばっかり?
蒼衣   えっ、別に、違うけどなんで?
凛    だってまだ制服だから。
蒼衣   あぁ・・・ちょっとウトウトしてたから。
瑞希   具合が悪い?
蒼衣   ううん、違う違う。ただ眠かっただけ。
瑞希   そう。
凛    さっき電話したんだけど繋がらなかったから、来ちゃった。
蒼衣   あぁ、ごめんごめん。
瑞希   相変わらず小奇麗な部屋だな。
蒼衣   あんたの部屋よりマシでしょ?
凛    さっきも少し片付けてたのよ。
1/15

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム