冥土の国のアリス
アリス「あれ⋯?ここどこ?私は確か⋯」
白ウサギ「たいへんだ、たいへんだ!急がないと遅れてしまう!」
アリス「あ、あの⋯!」
白ウサギ「なんだ!?私は忙しいんだ!」
アリス「ここはどこなの?なぜあなたは人間の言葉を話しているの?」
白ウサギ「君は何を言っているんだ!この世界では普通のことだろう!?ああいけない、もう時間がない!こうなったら君も来るんだ!」
アリス「えっ、あなたこそ何を言ってるの?それにどこへ行くの!?」
白ウサギ「これを見ろ、もうこんな時間なんだぞ!(懐中時計を見せる)来るなら早く来てくれ!」
アリス「ま、待って!白ウサギさん!」
白ウサギ、急に立ち止まり
白ウサギ「桜井。」
アリス「え?何?」
白ウサギ「桜井、と言ったんだ。この名前に聞き覚えはないかい?」
アリス「さくらい?⋯いいえ、ないけど⋯」
白ウサギ「じゃあ黒川、は?」
アリス「ねえ白ウサギさん、あなたさっきから何を言ってるの?そのくろかわっていうのも聞いた事ないわ。」
白ウサギ「⋯そうか、まあいい。ああ、こんなことを話してる場合ではないのに!早く行かねば!」
アリス「あ、ちょっと⋯!」
〜〜〜〜〜
アリス「もう、私にも来いって言ったくせに置いていくなんて⋯白ウサギさん、嫌な人だわ。」
公爵夫人、アリスに近づく
公爵夫人「あら、あら!アリスでないの!どこへ行っていたの?悪いお友達と遊んでいたんじゃないでしょうね?」
アリス「ええっと⋯あなたは誰?」
公爵夫人「まあ、私を忘れてしまったの?私は⋯ああ⋯ゴホン、私は公爵夫人よ。思い出したかしら?」
アリス「いいえ、ちっとも思い出さないわ。だって私たちは初めて会ったじゃないの。」
公爵夫人「何を言っているの!私たちは毎日顔を合わせていたわよ。ところで、今までどこで何をしていたの?」
アリス「えっと⋯あ、白ウサギさんを追いかけていたのよ。彼がどこへ行ったか知らない?」
公爵夫人「⋯白ウサギ⋯?」
アリス「ええ。知ってる?」
間
公爵夫人「さあ⋯見当もつかないわね。」
アリス「そうなの?ここにも来なかった?」
公爵夫人「⋯ええ、来なかったわよ。」
アリス「そう⋯」
赤ちゃんの泣き声
公爵夫人「ああ、やっと静かになったと思ったのに!なぜあなたはいつもいつもタイミングの悪いときにうるさくするのかしら!」
公爵夫人、おくるみを抱く。乱暴にゆする
公爵夫人「うるさいっ!!そんなに泣くと豚になるわよ!!」
アリス「む⋯娘さんなの?」
公爵夫人「⋯あら、そうだけど⋯見ていないのに、よく女の子だとわかったわね。」
アリス「え⋯あ、確かに⋯どうしてかしら。」
公爵夫人「そうだ、あなたも抱いてみたらどう?きっといい経験になるわ。」
アリス「えっ?でも私、赤ちゃんのお世話なんてしたことないわ。」
公爵夫人「お世話?面白いこと言うのね。こんなのただ抱いてゆすってればいいのよ。どんなやり方でもいいから、静かにさせてちょうだい。」
アリス「ま、待ってよ⋯」
公爵夫人、アリスのセリフを遮って無理やり赤ちゃんを抱かせる
赤ちゃんの泣き声がさっきより激しくなる
アリス「知らない人に急に抱かれたら泣くに決まってるわ。こういうときは⋯そうだわ、何かおもちゃとか⋯」
公爵夫人「みづき⋯」
アリス「⋯え?」
公爵夫人「美月!!」
アリス「⋯⋯っ!!」
「美月、美月!!どうして静かに出来ないの!!もう泣き止んでよおおおおお!!!」
「私が何したって言うのよ!!ちょっとぐらい静かに過ごさせなさいよ!!」
「あんたなんか産まなきゃ良かった!!」
「私がいなきゃ何も出来ないくせに!!」
アリス、おくるみを落とす
数秒後、SE 赤ちゃんの激しい泣き声
アリス「あっ⋯」
公爵夫人「⋯何してるの、落とすなんて。⋯まあ別に何も問題ないけどね。」
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