七夕VSクリスマスVSダークライ
『七夕VSクリスマスVSダークライ』

【キャスト】
祝井増夫  (いわいますお)。「国民の祝日を増やす党」代表。議席獲得を目指す。
平日向子  (たいらひなこ)。祝井の選挙を手伝うアルバイト。政策には興味がない。
笹原    「七夕を祝日にする会」会長。栗山と対立する。
栗山    「クリスマスを祝日にする会」会長。笹原と対立する。
ダークライ 平の枕元に現れる。悪夢を見せる(?)

シーン1
 夜、平の自宅。寝間着の平が舞台中央で板付き。スマホで友人と電話しているようだ。

平   ……うん、うん。意味わかんないよね。こんなんで選挙勝てるのって感じ……うん、いやでも、時給はそこそこいいんだよねー。仕事も楽だし。……え?いや私は政治とか興味ないよ。投票も行く気ないし。……うける。あーうん、明日も早いんだよね。そろそろ寝ようかな。……そうだね、うん、じゃあねーおやすみ。

 平、枕を置いて横になる。照明が暗くなっていく。しばらくして、上手からダークライが入ってきて、平の枕元に立つ。不穏なBGMが流れる。平、うなされている様子。BGMが途切れたところで、ダークライは上手に去る。照明が明るくなり朝になる。平、起床。

平   ……あー。しんど。(スマホを確かめて)……あ、やば。遅れる!

 平、枕を持ったり寝間着を脱いだり、バタバタしながら下手にハケる。上手から祝井が入っている。街頭演説。舞台中央、祝井が道行く人々に公約を訴えかけているが、まったく盛り上がっていない。

祝井  ……この国の経済成長、そして明るい未来のために、国民の祝日を増やしていこうではありませんか。「国民の祝日を増やす党」代表、祝井増夫、祝井増夫をどうぞよろしくお願いいたします。……祝井増夫、祝井増夫です。……。
平   すいません!遅れました。(下手から急いで入り)
祝井  あ、平さん。遅いじゃないか。
平   本当すいません、寝坊してしまって。
祝井  困るなあ、アルバイトとはいえ、時間はちゃんと守ってもらわないと。
平   はい、次から気をつけます。
(平、走って来たからか、息を整えている。祝井、その様子を見てから話しかける。)
祝井  ……例の悪夢?
平   ……あ、はい、そうです。
祝井  そうか。遅刻は良くないけど、それは大変だな。
平   このところ毎晩なんですよね。黒い人影が現れて。何かを訴えてくる?みたいな。
祝井  ほう。内容は?
平   うーん、なんか覚えてるのは、戦い?で、良くない結果になる?から、気をつけろ、みたいな。
祝井  ふーん。……って、ちょっと待ってくれ。それって、こんどの選挙で負けるってことか?
平   あ!そうかも。予知夢!
祝井  おいやめてくれよ。そんなの不吉じゃないか。早く忘れてくれ。
平   無茶言わないでください。……ていうか、私の夢とか関係なく、厳しいんじゃないですかね。ふつーに。
祝井  何を言うんだ。今回こそは議席を獲得するぞ。
平   いやー……ほら、いまの街頭演説だって。誰も聞いてなかったですよ。遅れた私が言うのもなんですけど。
祝井  う、痛いところを突いてくるな……。
平   ていうか、祝日を増やすとか意味あるんですか?私、政治とか興味ないですけど、変な公約だなーって。
祝井  いや、意味はあるぞ。祝日を増やすということは、それだけ多くの人が休みをとるということだ。消費活動が活発になって、経済効果も見込めるし、働き方改革にも繋がる。
平   ふーん。
祝井  そこで!法改正によって国民の祝日を増やし、豊かな暮らしを実現していこうというのが、我が党一番の、そして唯一の公約なのだよ。
笹原  その通りです!(下手から急に現れる)
平   うわなんだこいつ。
笹原  議席を獲得された時には是非とも!7月7日、七夕を祝日に、お願いいたしますよ。
祝井  はー、また君か。
笹原  (平に向かって)ん、君は新しいスタッフさんかな?申し遅れました。私、「七夕を祝日にする会」会長の笹原と申します。以後お見知りおきを。
平   はあ、よろしくお願いします……。
笹原  しかし祝井さん、街頭演説をするというのなら、私にも教えてくださいよ。ぜひともお手伝いさせていただきますのに。
祝井  君がいると色々とややこしくなるんだよ。それに……
栗山  はっはっは(上手から急に現れる)。止めた方がいいですよ。祝井さんが嫌がっているじゃありませんか。
笹原  お、お前は!
栗山  お前とは口が悪いですな。私にはちゃんと名前があるんですよ。「クリスマスを祝日にする会」会長の、く・り・や・ま、です。
平   なんなんですかこの人たち。
祝井  私もよく分からん。
笹原  そんなことは知っている。何をしに来たんだ。
栗山  そりゃあもう、今日こそ我々を認めていただこうと思いましてね。祝井さん、やはり祝日を増やすとなったらクリスマスです。我々が選挙活動を強力にバックアップいたしますので、ぜひクリスマスを……
笹原  何を言う。祝井さん、こんな奴に騙されてはいけません。年末に祝日を増やしたところでありがたみはありません。祝日にするならやはり、7月7日の七夕がふさわしいのですよ。
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