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攻防線

攻防線

・女
・男

　　　　舞台上に一線が引かれている。
　　　女、一線の内側で所在なさそうに佇んでいる。男、一線の外側から現れて。

男　　　どうだった？
女　　　また来たの。
男　　　だって、会いたそうにしてた。
女　　　まあね……でも、いきなり会いにくるのはやめてって言ったでしょ。
男　　　誰もいないからいいだろ。
女　　　そういう問題じゃないっていつも言ってるでしょ。ちょっと、そこ（一線を）、踏まないで。
男　　　越えてない。
女　　　越えそうだった。
男　　　細かすぎる。もっと肩の力抜いたら？
女　　　うるさい。
男　　　とにかく今夜、一緒にいるから。
女　　　そこ、越えないでよ。
男　　　越えないってば。
女　　　まあ、でも、うん……少し、会いたかった。
男　　　どうだった、今日は。
女　　　いつも通り。
男　　　なにもなかった？
女　　　ない。ないのに、会いたくなる日があるんだよね。
男　　　そう。
女　　　不思議じゃない？
男　　　こう考えるのは？　君はいつも僕に会いたいんだ。それをたまに思い出す。
女　　　　　　　なんで思い出すの。
男　　　他に考えることがないから？
女　　　ああ、それは、たしかに。言えてるかも。忙しいとほったらかしにしてるし。
男　　　拗ねるよ。
女　　　どうせ他で遊んでるくせに。
男　　　呼んでくれる人が多いからね。
女　　　そーですか。
男　　　悔しかったら、君も一線を超えて──
女　　　ちょっと、そこ、踏んでない？
男　　　踏んでないよ！
女　　　そう？
男　　　君だって、洗濯物をこっち側に干したりするでしょう。
女　　　ここ、私の家。
男　　　 ……。
女　　　でしょ？
男　　　ハイ。
女　　　ねえ、なんか飲む？
男　　　ご飯は？
女　　　今冷蔵庫になにもないの。買い物行けてなくて。
男　　　食べにいく？
女　　　うーん、いや、いいや。それより寝たいし。
男　　　そう。
女　　　その前にお風呂。
男　　　行ってらっしゃい。
女　　　そっちに着替え、ない？
男　　　着替え？
女　　　干しっぱなしにしてない？

　　　　男、辺りを時間をかけて見回す。

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