悪に飽くなら、明くる日までの悪々しさを
「悪に飽くなら、明くる日までの悪々しさを」
登場人物
主人公:真面目系
友人A:幼稚園からの主人公の幼なじみ。Bと付き合っている。ヒーロー気質。
友人B:中学校からの主人公と友人Aの幼なじみ。Aと付き合っている。
母親:主人公の母親、最初の父親がいなくなってから少しずつおかしくなっていった。
父親:母の再婚相手
刑事:捜査一課の刑事。
隣人:主人公一家が住むアパートの隣に住んでいる。
第一幕
拘置所にて
中央の椅子に座る主人公
暗転の状態から主人公に照明
主人公:悪って何でしょうね。
それは人類が思考するという進化を遂げた中で発生した、生き物という存在に対する永遠の命題でしょう。
他を傷つければ悪なのか、悪を成した他を傷つけることは悪では無いのか。しかしそれではどう悪を裁くのか。
この命題に関しては永遠に解は出ないでしょう。なぜならこの悪という定義こそがそもそも、不確かで不存在で不条理のそれであるんですから。
強いて言うのであれば人類こそがその言葉を体現するに足る唯一の存在ですかね。
思考し、試行する。それは人類にとって過不足無い完璧な嗜好品として長くこの世で繁栄してきました。フッ、さもありなん。そこに理由(わけ)などありはしませんよ。知を追い求めることこそがヒトという生き物にとって抗えない快楽であり、看過できない衝動なんですから。僕に言わせれば、それこそがヒトの欲の根源にある強大な“悪”なんですよ。
知と言う名の悪を追い求め人類は何を成した?
栄光か?虚栄か?英断か?繁栄か?延命か?
答えは全ていいえだ
成したことはと言えばこの地に血の雨を降らせたことのみ。
この広大なる大地の広域に、石を、槍を、斧を、刃を、鉄を、銃弾を、余すことなく降らせた。毒を、ガスを、疫病を、微かな漏らしもなく蔓延させた。悪意を、敵意を、害意を、ところ構わず伝染させた。これに連なる人類の過ちは須く己の首を絞める真綿となっている。
わかりますか?
この惨状を経てもなお人類という知の亡者は進むことをやめなかった。口唇(こうしん)を震わせ、きれい事を並べながら、破滅への行進を続けたわけだ。
これが悪の本質であるとも知らずに。
その理由をどうか教えてくれ。無知蒙昧にして、浅学非才なこの身にどうか回答を与えてくれ。愚鈍で、怠惰で、滑稽で、惨めで、哀れで、死に体な、この僕に。
あんたなら分かるだろう。いいや、あんたにしか分からないはずだ。だからこそ、ここにいるんだろう。そうじゃなきゃおかしい。いやそうじゃなきゃいけないんだ。
だってあなたは知を追い求め、悪へ突き進み、この大地に血の雨を降らしたあの原罪を背負いし、知の亡者とも言うべき、人間を、断罪すべき存在なのだから。
主人公仕切り直しの意で手を鳴らす
主人公:それでは改めて、三度(みたび)あなたに問いましょう。
悪ってなんですか?
暗転
第二幕
明転
街の喧騒が響く中、三人が楽しげに歩いている
やがて友人A、Bが道ばたにあるベンチに座り、主人公はその近くに立ち止まる
友人A:あ~疲れた~。
友人B:ね~。
友人A:っていうか、マジで歴史がわけわからん。なんですか、そんなに過去の人のやったこと
が大切ですか。
主人公:そりゃー大切だよ。先人の教えからは得るものが多いからね。もし、今までの歴史やそ
れに連なる文献が現在に引き継がれていなかったら、人類は今でも天動説を信じていた
かもよ。
友人A:いや、おれが言ってるのはそういう、壮大な話じゃなくて、もっとこう一般人的な話?
友人B:友人A自分でも分かってないじゃん。とりあえず勉強するのが面倒くさいってだけで
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