放課後のハイドレンジア
宮下:……このコップ、反対になってる。
椎名:え、気のせいじゃない? 最初からそんなだったよ。コップってそんなに主張する子だっけ?
佐藤:夜中に幽霊がコップを反対にしてたら、ちょっと面白くない?
椎名:いや普通に怖い。
黒木:ただ誰かが反対にしたんじゃない?
宮下:みんなが帰る時にコップを見たんだけど……あっ、ちなみに廊下側からね。コップには少し水が入ってる状態だった。その時、コップは反対になってなかった。
田所:宮下の記憶が間違ってるんじゃない?
椎名:お、写真?
田所:そう。はいチーズ。
椎名:いぇい! そうそう宮下の勘違い。
佐藤:そんな時もあるって。
宮下:みんながそう言うなら、そうかな。
黒木:宮下、意志よわ。
緒方:確かにコップには水が入ってた。反対にしたら水がこぼれて大変。
宮下:ん? ほら、やっぱり! 間違ってなかった。
椎名:緒方が言ったのは、コップに水が入ってただけ、少しの水じゃコップを反対にしたって分からない。
田所:こぼれたら拭けばいいし、声とか動きとかで大袈裟にしなければ、注目もされないと思う。
佐藤:みんなが帰る時に、反対になっていなかった証明にはならない。
宮下:ん〜! 緒方、言ってやって!
緒方:夕日が綺麗。そう言えば一年に教育実習生が来てた。
宮下:……。
椎名:緒方にも見捨てられた。
佐藤:まぁ宮下の言うことが間違ってなかったら、この空き教室は密室だったってことになる。黒木が鍵を閉めたとこは皆んな見てたわけだし。
椎名:そんなことよりも聞いてよ。今日、七瀬先輩が職員室の前でずっと立ち止まってた。
佐藤:どれぐらい?
椎名:三十分ぐらい? 先生に呼ばれてたけど七瀬先輩が思い詰めた顔してたから気になって見てたんだよ。でも七瀬先輩は職員室の扉を開けずに帰っちゃった。
黒木:で、椎名はいつも通り先生に怒られたと。
椎名:そう、なんで怒られたの!
佐藤:それは先生に呼ばれたのにすぐに来なかったからでしょ。
椎名:理不尽だ〜。
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