フラングルクに響き渡る銃声
ルーカス:「……妙だな。今夜の星空は、やけに静かだ」
ソフィア:「あの男が大人しく死んでくれたおかげでしょうね」
ルーカス:「大人しかったか? 随分と抵抗していたように見えたが」
ソフィア:「まぁ抵抗するのは当然です。自分が死ぬって分かれば、誰だって足掻きます。ルーカスさんの顔を見た瞬間の顔は、絶望に染った顔してましたよ」
ルーカス:「やっと見つけた最後の一匹だったしな。この結末になるのはあの男も分かっていただろ」
ソフィア:「まぁでも墓場が新築の倉庫だったことが唯一の救いでしたね」
ルーカス:「救い? なんで新築の倉庫で死んだことが救いになるんだ?」
ソフィア:「え? ルーカスさんはネズミのフンが撒き散らされた古い倉庫で死にたいと思うんですか? 僕はごめんです」
ルーカス:「……それもそうだが。殺し屋はいつ死んでもおかしくない。死に場所を選ぶ権利もない」
ソフィア:「知ってますよ。でも自分の死に場所ぐらいは想像してもいいでしょ」
ルーカス:「想像するのは勝手だが、カッコよく死のうとか、お花畑の上で死ぬ想像は止めとけ」
ソフィア:「なんでですか? よくイメージしますよ。ヒーローみたいな死に際も、お日様に照らされながら死ぬ、潔良い死に方も」
ルーカス:「名誉な誇りある死に方なんてものは存在しない。ドラマチックな死なんか訪れない。真っ暗な死がそこにあるだけだ。ただ怖い。それがどこまでも続いている。その怖さは、想像した夢の分だけ絶望として残る」
ソフィア:「怖いこと言わないでくださいよ」
ルーカス:「死は恐れろ。ということだ。お前の殺しには遊びが見える。スマートに仕事をしろ。このままだったらいつか呆気なく死ぬことになる。死ぬ時になってネズミからキスされても知らないぞ」
ソフィア:「それは勘弁です。ん〜、まぁでも僕が死ぬことは無いですね」
ルーカス:「その慢心はどこから来るんだ」
ソフィア:「僕の後ろには伝説の殺し屋がついているので、死ぬことは無いですね」
ルーカス:「いつも俺がいるとは限らない」
ソフィア:「じゃあ、伝説の殺し屋が居ないところでは、教え通りスマートに仕事します」
ルーカス:「はぁ……火、持ってないか?」
ソフィア:「また忘れたんですか?」
ルーカス:「おっ、サンキュ。……スー。……ふぅ〜。今日で最後だな」
ソフィア:「なにがですか?」
ルーカス:「ん? あぁ、言ってなかったか? 俺は殺し屋を引退する」
ソフィア:「え? いつですか?」
ルーカス:「今日だ今日。この殺しで最後にする」
ソフィア:「本気ですか?」
ルーカス:「本気だ」
ソフィア:「またいつもの冗談ですよね? それにこの殺しで引退って、雑魚狩りして終わる気ですか? 伝説の殺し屋が!? カッコつかないですよ」
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