末裔
末裔
2025.08.14
作・なかまくら

巨人 ・・・ 安堂ユウサク。
博士 ・・・ 兼業でマネージャー業みたいなもの。名前は森畑凛南。
記者 ・・・ SARUテレビの浅草。たかしくん。キャスター。怪獣マニア。カメラマン兼任。
師匠 ・・・ 師匠。太陽系外の動向を監視している。記者2、監督を兼ねる。
若鶴 ・・・ 記者。世界を記す者である。武器の商人。記者3も兼任。赤牛上院議員も兼任。怪獣。

#0 プロローグあるいはエピローグ

巨人  未来のビジョンが見えるときがある。そこでは、巨人の私はひとり座っている。地球は、随分と暗い。空の星々を眺めている。戦いは終わっていて、隣には飲み物を2本持った怪獣が近づいてくる。それがどれだけ遠い未来なのかはわからない。明日の出来事なのか、はたまた太陽が燃え尽きた後の未来の出来事なのか。それまで私が戦いに勝ち続けていたのかさえも。

巨人  暗い場所だ。
怪獣  ご苦労様でした。

怪獣は隣に座る。

巨人  座談会でもしようというのか。
怪獣  まあ、そう言わずに。君も一枚食べないか。ふるさとの味なんだ。
巨人  いただこう。
怪獣  ・・・どうだ。
巨人  ・・・永らく忘れていた味のような気がする。これは、だが、血が覚えている。雲母だ。そう、鉱物の雲母のようだ。
怪獣  君は正しい。地球人は知らないが、これは隕石によって、かつてこの星に大量にもたらされたものだ。侵略するための我々の食料としてだ。君の祖先は、それを都合よく忘れてしまったのだ。
巨人  それはすまなかった。
怪獣  だが、仕方のないことかもしれないな。それほどに、この星は美しかった。
巨人  怪獣のお前でも、そう思うのか。
怪獣  ああ、思うね。
巨人  私は・・・私はすっかり、人の血が混じってしまったから、そう思うのだと、そう言い聞かせて生きてきた。
怪獣  随分と弱くなったものだ。
巨人  重力は小さいが、水は多い。草木は毒を持たないものも多く、生命を育んでいる。この星のその抱擁が、私を堕落させてしまった。
怪獣  お前を、ではない。お前の一族を、だ。我ら星人が、お前の一族をこの星に送ったのは、ほかでもない。力の継承を可能とする一族であったからだ。困難は世代とともに解消され、最後には、必ずや我らに第二のふるさとをもたらしてくれるものと思っていた。
巨人  それは、すまなかったと思っている。
怪獣  不要だ。その謝罪には過ちに対するものではない。
巨人  すまない・・・。
怪獣  不要だと言っている。
巨人  ああ・・・。
怪獣  なんだ、少し疲れたのか。
巨人  そうかもしれない。久しぶりに力を使ったような気がする。
怪獣  人類は力を蓄えた。お前の力など、呼び覚ます必要がないほどに。
巨人  白々しい。太陽フレアで電脳を持つ超兵器がオシャカになった、この日を何年も待ち続けていたんだろう。雲母も電気をよく遮った。
怪獣  力が衰えたといっても、まだまだ見通す目は健在か
巨人  すでに、私の代では、失われてしまった力だ。先々代の・・・祖父から借り受けた力だ。
怪獣  そうか・・・。お前たちも滅びようとしているのだな。
巨人  滅びるのではない。交じわるのだ。大切な人がたくさんできた。彼らと生きていきたい。
怪獣  必要とされているのか。それはどちらだ。その能力か、それともその為人(ひととなり)か。
巨人  自意識過剰なんだ、きっと。私も、お前も。
怪獣  我々は強いお前を歓迎するぞ! 単純な理屈、強い者たちの世界だ。楽しいぞ。
巨人  私は、力を媒介するメダルを使って、巨人の力を行使することができる。そんな弱い存在になった。・・・だが、これでいいと思っているんだ。これは、力を手放す準備なんだ。電脳の超兵器も、私がただの人になるために助力してくれている・・・。いまは、そう思えるようになったのだ。
怪獣  ただの人に成り下がりたいのか。
巨人  ああ。
怪獣  脅威の前に逃げ惑い、耳をふさいでいるしかない人間に。
巨人  ああ・・・だが、手を取り合い、立ち向かうことはできる。
怪獣  ・・・そうか。この星はまもなく電磁波の影響から、復旧する。その前に、俺は星に一度戻ることにする。
巨人  ここで生きることはできないのか。
怪獣  ここには俺の居場所はない。必要とされる場所こそが居場所なのだ。
巨人  必要とは、・・・いや、なんでもない。
怪獣  そうか。そうだな、立ち去る前にこれだけは聞いておこう。お前に何があった。
巨人  そうだな、話そう。夜が明けるまでにはもう少しだけ時間があるのだから。
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