ロウチカは無実
【ロウチカは無実】
トマーシュ 男 劇団テムノタの座長
アドリアナ 女 若手役者で、演技力に伸び悩んでいる
アダム 男 次回公演のために入団した新人劇団員
カテジナ 女 几帳面で繊細
エリアス 男 カテジナの同期。
マリア 女 劇団員の中では1番の古株で、看板女優としてヤナを操る
〈ロウチカ〉
チェコ語で操り人形を意味するLoutka(ロウトゥカ)をもじった言葉。本作では,ロウチカは必ずしも人形ではなく、人のようなものとして台詞もある。また、現実と空想が入り混じるという点において、その象徴的な役を担う。
ヤナ(Jana) テムノタの看板人形。歴代の看板女優たちが操っていた
ヤクブ(Jakub) ヤナの兄。アダムが操る人形
〈人形劇について〉
今でこそ娯楽文化として親しまれる人形劇だが,16世紀ごろには,国で起きた事件を地方に伝えるメディアの役割をしていた。
【プロローグ】 ロウチカであるヤナの劇中劇から幕を開ける。
(明転)
ヤナ「親愛なる皆様、どうか、哀れには思わないでください。私たちの物語はようやく、終演を迎えたのですから。これは決して、悲劇などではありません。ヤクブとヤナ2人の約束は、今、果たされたのです。むしろこれは、人間讃歌。ロウチカとして舞台で生きる業の深い輪廻から外れたのです。幕が降りたら大きな拍手をお願いいたします。皆様の拍手を以って、私たち役者は、この物語を終わるのです。」
(ヤナ、深く一礼をする)
(拍手するトマーシュ)
トマーシュ「いやあ、今日も大盛況じゃないか!素晴らしい出来だったよ。」
ヤクブ「ありがとうございます」
ヤナ「座長、次はどこへ行くんですか」
トマーシュ「どこへでも。村がある限り、街がある限り、国がある限り。」
ヤクブ「では、僕たちはいつ舞台を降りるんですか」
トマーシュ「事件がある限り、ロウチカが舞台を降りることはない。」
ヤナ「ヤクブ、あたし、あの頃に戻りたい。」
ヤクブ「ああ、ヤナ。そうだな。僕たちはもうすっかり忘れちまった。」
トマーシュ「さあ、行こう。哀れなロウチカたち。お前たちは人ではないのだから、人間のどんな愚かな歴史を演じても、神に裁かれることはない。もしもあるとすれば、それは運命。わたしの筋書きを覆すことは、運命以外に出来はしない。それまでは、今日も明日も、終わらない悪夢を、演じておくれ。」
トマーシュを挟むように観客を見つめるロウチカたち
出演者が四方から舞台に集まってきて、3人の後ろに立っている
ヤナ、ヤクブ「事件がロウチカを連れてくるのか、ロウチカが事件を連れてくるのか。そんなことはわたしの知ったことじゃない。しかし、ただ一つ、私が言えるのは____」
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