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たかがタコが絡んだだけ

『たかがタコが絡んだだけ』
　　　　　　　　　　　　　　　　　　山上晃輝

内野壮吾　男、２１、明石に関するオカルトマニア
跡部健一　男、５０、漁師　北海道
門脇真司　男、３７、漁師　神奈川
柴田大地　男、４２、漁師　広島
田中　亮　男、６８、漁師、セリフなし
岡本澄江　女、６１、港の食堂の女将
中村　忠　男、６５、田中の漁師仲間
吉谷刑事　性別不問、３３

　　　　８月　明石　市場　早朝

吉谷　被害者は田中亮さん、６８歳。地元のタコ漁師ですね。死亡推定時刻は昨夜１０時。死因は溺死。遺体の第一発見者は岡本さんですね。
岡本　はい…
吉谷　被害者とはどういった関係で？
岡本　私が女将をしている食堂の常連さんでした。
内野　僕が怪しいと睨んでいるのはこの３人です。高齢順に、跡部さん、柴田さん、門脇さん。全員漁師、それもタコのね。
吉谷　そうか、その３人のアリバイは？
内野　そこなんですよ。３人ともアリバイがあるんですよね。どうしてもそこが気になってて…
吉谷　どんなアリバイが…って、君は誰だい？警察じゃないでしょ？
内野　警察ではありませんが、決して怪しい者でもありません。
吉谷　十分怪しいよ…で、本当にどちら様？
内野　僕は内野壮吾と申します。気軽に、壮ちゃんとでも呼んでください。
吉谷　呼ばないけどね。学生？
内野　実は僕、所謂オカルトマニアってやつで、主に明石にまつわるオカルトをチェックしているんですよ。
吉谷　そ、そっか…
内野　あっ今疑ってますね？しょうがないなぁ。はい。

　　　　内野が吉谷にノートを手渡す。

吉谷　…何これ？
内野　活動記録を記したノートですよ〜。明石のオカルトがたくさん記されてるでしょ？
吉谷　えーと…「大学生５人が明石海峡大橋の爆破を試みた！？講義内で犯行を結託か」そんな事件あるわけないでしょ。
内野　そんなに一蹴しなくても…
吉谷　そんなことはいいんだよ。ちょっと、そこのお三方。お名前は？
跡部　俺は跡部健一だ。
柴田　わしは柴田大地じゃ。
門脇　僕は門脇真司です。
内野　３人揃って〜？
３人　三馬鹿タコ漁師〜
柴田　って、何やらせとんのじゃ！
内野　いや〜、息ぴったりですね〜。
吉谷　あの、オカルト好きなのは構いませんが、捜査の邪魔はしないでいただきたい。
内野　邪魔だなんて、そんなとんでもない。僕は捜査に協力をしたいだけです。
吉谷　…一応、君も容疑者だよ？
内野　そんなはずがございません。
吉谷　じゃあ、昨夜はどこで何をされてたの？
内野　オカルト調査で、この港を訪れておりました。
柴田　絶対、犯人そいつじゃねぇか！
跡部　何が俺たちが怪しい、だよ！
門脇　刑事さん、もう帰ってもいいですか？
内野　いや、皆さんから直接、昨夜何をされていたのかお聞かせ願いますか？まずはそちらの…
跡部　ああ、俺か。俺は昨日の昼頃に明石に着いたんだ。航空券とタクシーの領収書でいいなら証拠として出すぜ。
吉谷　ちょっと確認しますね。

　吉谷が跡部から紙２枚を受け取る

吉谷　確かに昨日のものですね。ちなみに、北海道から来られているようですが、何をされに来たんですか？

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