翼の記憶
翼の記憶

天  使
死  神
少  女
神  父
警  官

オープニング:天使の夢
人々が行き交う。
少女がいる。ユダヤ人の隠れ家。座ってピアノを弾くまねごとをしている。
別空間に,道行く人々と静かに会話を交わす神父。
なじみのパン屋にもらったのか,小さな袋を持ってやってくる警官。向こう側にいるであろうパン屋の店主に会釈をしながら出てくる。
神父と警官,目が合い,言葉を交わす。
天使,入ってくる。そんな人々の様子を幸せそうに眺める。つかの間の優しい風景。
優しい雰囲気の中で,微かに飛行機の音が聞こえる。天使,空を見上げる。飛行機の音,だんだん大きくなる。全員,空を見上げる。
  
 暗 転
ステージ1:現代の教会
鳥の声。忘れられた場所にひっそりとたたずむ教会。人気のないその空間で天使が本を枕に眠っている。結構だらしない。
と,そこに黒い格好をした女が迷い込んでくる。

黒女  (ドアの前)すいませーん。(中に入る)あのー。

天使,気付かずスヤスヤ・・・。

黒女  あのー,もしもーし。
天使  神様~仕事はまだいいですぅ~。むにゃむにゃ・・・。
黒女  はい?・・・もしもーし!

天使,ようやく夢うつつから覚める。

天使  あれ?君,誰?
黒女 ・・・。(気を取り直して)私は,死神よ。
天使  死神?
死神  そう。あんた,天使?
天使  そうだけど?
死神  よかった。ここでいいんだ。天界でコレもらったんだけど。(紙を出す)
天使  (見る)・・・命題?
死神  「めいだい」?なにそれ?
天使  ん?神様からのメッセージとでもいえばわかりやすいかな。もっとも,僕も見るのは初めてだけど。
死神  「初めて」って・・・。
天使  だって,ここにきてこのかた,神様から仕事を貰ったことないもん
ま,おかげで楽のし放題の生活だけどね。えーと,ナニナニ?「ドイツの天使のいる教会へ・・・」?
死神  だれもいないんだね,ここ。
天使  僕が来たときから,もうずーっと使われていないよ。
死神  ずーっと?どのくらいここにいるの?
天使  どのくらいだろ?忘れちゃった。もうずーっと昔。
死神  人は来ないの?
天使  ここから少し出た場所に古いお墓があったでしょ?
死神  うん。
天使  時々,そこに人が来る以外は神父もいない,忘れられた場所だよ。
死神  そっか・・・。
天使  あのさ・・・君,死神だよね?なんでここに?
死神  ・・・だから,コレ。(紙)
天使  いや,わかるけど・・・。だって,ここ,教会だよ?死神が教会につかわされるなんて聞いたことがない。
死神  そうなの?
天使  そういうもんじゃない?
死神  ふーん。いや,私ね,前世で人間ていう生き物だったんだって。で,ここに私と同じ,前世が人間だった天使がいるって言われたの。
天使  僕も人間だったの?
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