創作落語「マルゲリータ」
語り: 皆さん、スーパーマリオブラザーズって知ってます?
語り:
語り: そりゃご存知ですよね。あのスーパーマリオが最近映画になったそうでして。実写のほうじゃないですよ。あれは酷い映画でした。そうじゃなくて、なんでも、怪盗グルーやミニオンズを作ってるイルミネーションという3Dアニメの会社が任天堂と手を組んで製作しまして、その3Dアニメの映画が世界中で大ヒットしてるってんですから、こりゃあ、たいしたものです。
語り:
語り: このスーパーマリオブラザーズが作られたのが1985年。それから、スーパーマリオブラザーズ2、スーパーマリオブラザーズ3、スーパーマリオランド、スーパーマリオワールド、スーパーマリオサンシャイン、スーパーマリオギャラクシー、スーパーマリオ3Dランド、スーパーマリオ3Dワールド、スーパーマリオオデッセイなんてタイトルでほぼ毎年スーパーマリオのゲームが発売されているわけです。
語り:
語り: 2匹目のドジョウどころか、ドジョウは何匹いるんでしょうな。
語り:
語り: で、皆さんご存知、あの赤い帽子にヒゲを生やしたキャラクター、マリオなんですが、このマリオが最初にゲームに登場したのは、スーパーマリオじゃなかったって話はご存知でしょうか。
語り:
語り: 実はマリオが初登場したのはファミコンが生まれる2年前。ゲームセンター用のゲームとして開発されたドンキーコングなんですね。
語り:
語り: 当時、任天堂は倒産の危機を迎えていました。レーダースコープってゲーム機を作ってアメリカに乗り込んだんですが全く売れず、シアトルで借りた倉庫には、売れないゲーム機が山積みになって埃をかぶっていました。当然家賃も払えません。そんなある日、オーナーのミスター・セガールが家賃の催促に来ました。

0:ドアをノックする音。

社員A:あ、誰か来た。きっとあれだよ。またセガールさんが家賃払えって言いに来たんだ。うるさくてかなわないねぇ、まったく。こっちは新作のゲーム作ってんだから、ちょっとは静かにしてくれってんだ。おい、お前、なんとか上手く言って追い返してくれ。
社員B:俺かい? なんて言えばいいんだよ。
社員A:適当におだてて気分をよくしてやるんだよ。そういうの得意だろ、お前。
社員B:ああ、よし、わかった。なんとかやってみるよ。

語り: ドアを開けると怒り心頭のオーナーが立っていました。

セガール:任天堂さん、今日という今日は払っていただきますよ。
社員B:セガールさん。会いたかったセガールさん。ちょうど今、セガールさんの話をしていたところなんですよ。な、そうだよな。
社員A:うん、そうそう。
社員B:セガールさんはなんて素晴らしいオーナーなんだ。こんなオーナーに出会えて俺たちは幸せ者だって。な、そうだよな。
社員A:うん、そうそう。
社員B:だってそうでしょう。こんなに素晴らしくて快適な倉庫を手頃な家賃で貸してくれただけじゃなく、何か困ったことはないかといつも気を配っていただいて。しかもセガールさん、服のセンスが最高だ。いつもかぶってる赤い帽子との着こなしが絶妙なんです。ぜひ参考にしたいって、ちょうど今、話してたんですよ。
セガール:そ、そうかい?
社員B:そしてなによりもカッコいいのが手入れされたそのヒゲです。ダンディって言葉はセガールさんのために作られたと言っても過言ではありません。
セガール:そうかい?
社員B:そんな尊敬する我らのセガールさんに、今日は一つお願いがあるんです。
セガール:お願い? 家賃のことだったら・・・。
社員B:(遮って)いやいやいや、そうじゃなくて。実はですね。セガールさんに、開発中のゲームの主人公のモデルになってほしいんです。
セガール:私がゲームのモデルに?
社員B:赤い帽子をかぶったキャラです。名前はマリオ・セガール。想像してみてください。世界中の人たちがセガールさんのゲームをするんです。
セガール:私のゲームを。
社員B:お願いします。素晴らしいオーナーのセガールさん。どうかモデルになってくれませんか。
セガール:(上機嫌)そこまで言われちゃ、しょうがないねぇ。
社員B:ありがとうございます。で、今日はどんなご用件で。
セガール:ああ、いや、たいしたことはないんだ。また来るよ。
社員B:あ、そうですか。それじゃまた。(見送って、ホッとため息)
社員A:帰った?
社員B:帰った。スキップしながら帰っていったよ。
社員A:お前、すごいね。
社員B:褒めてみるもんだね。上手くいったよ。
社員A:だろ。おーい、今作ってるキャラクターに赤い帽子かぶせてといてくれ。

語り: これがマリオが誕生した瞬間でした。それから約十年後、スーパーマリオブラザーズが世界中でヒットした時、マリオのモデルとなったミスター・セガールはこう語ったそうです。

セガール:任天堂から小切手が届くのを待っているよ。

語り: もちろん冗談でしょうが、半分本気だったのかもしれません。

語り: さて。とっさにつけた名前が有名になって世界中に知れ渡るってのは、昔にも似たような話がございまして。

ローザ:あんた、起きて。
ラファエラ:(寝ぼけて)あん、なんだよぉ。
ローザ:そろそろ窯に火を入れる時間だよ。
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