脚本ダウンロードサービス

白い部屋五人バージョン

菅原貴人　作
　白い部屋　五人バージョン

登場人物
　　　　　男
　　女
　　　　　ふたりめの女
　　　　もうひとりの女
　　　　　監督な人（そしてもうひとり）
第一場

　　白い部屋おそらくは診察室
　　ナースな女は椅子に座り、机にひじをかけて男の方をみている
　　ドクターな男は丸椅子に座っている

男　今なにか？
女　（意味深に胸を指しながら）ここに何か隠してる。
男　あなたが？
女　あなたが！
男　わたしが！何を？
女　何でしょうね。
男　何でしょうね、って。
女　スキャンしてみましょうか？
男　やめてください。患者じゃ…
女　（重ねて）患者じゃあるまいし、ですか？そうね。
男　え？
女　まずは自分の目で見ている世界を信じるがいいわ。
男　信じるって…
女　自分が何者なのか。目の前にいる者が何者なのか…
男　何者？
女　最近、自分の身体がおかしい、とかない？
男　少し太ってきたかな？と。
女　「太ってきた」（といいながら、キーボードに打ち込む）。
男　いや、だからって（胸をさしながら）ここがはってきたとかってわけは…
女　大きくなってきてませんか？
男　いや、その。
女　お腹も大きくなってきてますね？
男　いえいえ、そんな…
女　すっぱいものが食べたくなったりしてませんか？
男　何いってんですか。ぼくは男ですよ。
女　なるほど。「ぼくは男ですよ、と発言」（キーボードに打ち込みながら）。
男　何を電子カルテに… それに…
女　それに？
男　まるで僕が…
女　男ではないかのように？

　　ふたりしばし見つめ合う
　　女はあくまでも意味深に
　　男は困惑しつつ

女　気づかないことって幸せよね。知ってしまうと…
男　何の話ですか？それに…
女　それに？
男　やだなぁ。もうやめましょうよ。本物の患者さんがきちゃうでしょ？
女　あなたがドクターで私がナース。そう思ってますよね。
男　また、そんなことを。なにもいわなくたって。
女　そう言ってほしいんですよね。あなたは。
男　そろそろ仕事にかかろう。（女の名を呼ぼうとして）えーと、とにかく、そこは僕の席だ。

　　男、立ち上がる

1/5

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで！