二人芝居「地球でクラムボンが二度ひかったよ」Ⅱ
宮沢賢治が原爆のピカを見た
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二人芝居「地球でクラムボンが二度ひかったよ」Ⅱ
―宮沢賢治が原爆のピカを見た―
2001.1.3(初稿)
2024.7.21(最終稿)
2025.6.20
【あらすじ】
「賢治先生と脇役(一人何役もの役をこなす)との二人芝居ということになっています。
賢治先生が、銀河鉄道の駅から望遠鏡を覗いていると、地球がピカッとひかったのです。
そもそも地球は惑星ですから、自らはひかりません。ふだんは宇宙の闇の中にまぎれているのですが、
なぜか一瞬ひかりを発したのです。賢治先生は、よだかにたしかめ、
そこから、ピカの原因究明がはじまります。
あとは観てのお楽しみ。
【では、はじまりはじまり】
舞台の背景は星空。銀河が斜めにかかり、それに沿うように銀河鉄道の線路が延びている、そんな絵柄。
場所は銀河鉄道のどこかの駅。
登場人物
シテ 童話の人物からは賢治先生と呼ばれているが、
銀河鉄道の車掌(帽子にマント、ただし帽子は車掌帽)
ワキ 賢治先生をのぞいた登場人物すべてを演じ分ける
(ワキは演じる人物が変わったとき、舞台の上で扮装を付け替える。
ただ、扮装といっても、たとえばよだかなら鳥の絵に紙の帯を付けた冠りもので十分である。
その早変わりや扮装の付けまちがいが、“深刻劇(?)”を“ドタバタ喜劇”にする。
また、脇役を分担する演出も考えられます。)
(幕が開くと、シテ(賢治先生)が望遠鏡を覗いていて、ワキ(看護師の服)がその斜め後ろに控えている。
ワキの足下には扮装の小道具類がばらまかれている)
賢治先生(望遠鏡から目を離して)「なあ、よだかよ、おまえも見たか、
あのひかりを。わたしはきょう望遠鏡を覗いていて、偶然目にしたのだ。
天の川の底の砂金の粒が揺れたような一瞬のかすかなきらめきを。
わたしが生まれた日本が宇宙に放ったひかりの一閃を。」
よだか(ワキは、独り言をいいつつ、おもむろによだかの冠をつける。)「おやおや、今日はよだかからお呼びですね。
では、しばらくお待ちを……。
さてとどうするか、見たというべきか、見たような気がしますと言うべきか、(と、つぶやき)
……はい、賢治先生、たしかに私もみました。
弱々しく見逃しそうなかすかなひかりでしたが、しかしどこかまがまがしい色合いをおびたあのピカを……。」
賢治先生「あれはいったい何のひかりだったのか?」
よだか「わたしが空に翔のぼって翔のぼって自分のからだがしずかに燃えているのを見たとき、
そのひかりは燐の火のような青い美しい光でした。あんなふきつな光芒ではなかった。」
賢治先生「いまもよだかの星は燃えつづけている。みずからを浄める青いひかりを発して……。
地球は、しかし水の惑星としてかがやいているが、みずからひかりを発しない惑星の宿命、
宇宙の闇のなかでは暗闇にまぎれてその位置すら分からないのだ。それがきょうピカッと輝いた。
ふしぎなひかりだった。」
よだか「地球のひかりがこんな何十光年も離れている銀河鉄道の駅までとどくだろうか(とひとりごとをつぶやきながら)、
たしかにあれはふしぎなひかりでした。みずから発したひかりでありながら、
みずからを浄めるひかりではなかった。いったいあのひかりは何だったのでしょうか。」
賢治先生「たしかにそのようだった。人がみずからを焦がして浄めるひかりというより、
人間の持つどうしようもない邪悪な暗いものが一瞬触れあいショートしたような、
そんな……ピカッと冷たいひかり方だった。地球に、というか日本に何か大変なことがおこったにちがいないのだ。
それが知りたい……。」
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