一人芝居「クリスマスケーキ哀歌」
−登場人物−
・杉崎 健太郎(29)
(照明)地明かり、フェイドイン。
テーブル、クリスマスケーキの箱が積まれている中、杉崎がクリスマスケーキを
売っている杉崎。サンタの格好をしている杉崎。お客さんに声をかけている様子。
杉崎:いらっしゃい、いらっしゃい。ケーキ、いかがですかー。奥様、ケーキ、どうです?
甘くて、甘くて、もうすっごく甘いケーキですよ。甘いものは嫌い? あ、そうで
すか…。(カラ元気で)良いお年を〜。
去ってしまった様子。がっくりする杉崎。
また目の前にお客さんが通りかかる。
杉崎:あっ、ケーキいかがですか! えっ、今日まで仕事でお疲れ? それならこちらのケー
キ超〜オススメですよ! もう甘くて甘くて、甘ったるくて疲れなんか忘れちゃいます
から!! そこまで甘いならいらない? あ、そうですか…。(カラ元気で)良いお年
をぉ〜。
去ってしまった様子。がっくりする。
杉崎:はぁ…売れない…。大晦日にクリスマスケーキは…。…クリスマスを過ぎて安くなった
ケーキを大量入荷して売れば、大もうけ! …このアイデアは良かった…と思うんだけ
ど…。まさか…こーなんに売れないなんて…。えっと、これまでに売れた数は…。
ケーキの箱と段ボール箱を数える。
杉崎:…1個…。わぁー!! 1000個仕入れて、1個しか売れてないっ!! うわーっ!
しゃがみこむ杉崎。
お客さんが来た様子。
杉崎:あっ! お買い求めですか? 違う…? 稲荷神社? えっと…でしたら、この道をまっ
すぐ行って、二つ目の信号を右に曲がって、その突き当たりが稲荷神社です。…いえいえ
…。どういたしまして。よ、良かったらケーキを…。…ケーキはいらない? …調子にの
るな? あ、すいません。すいません。
ペコペコ頭を下げる杉崎。
お客さんが去った様子。頭を上げる杉崎。
杉崎:神社…。
腕時計を観る杉崎。驚く。
杉崎:わ! もうこんな時間…。あと10分で年が明けるんだ…。僕はケーキを売りながら新年を
迎えるのか…。それも、こんな格好で…。
ため息をつく杉崎。
杉崎:ふぅ…。僕の一年、何だったんだろう…。リストラにあって、彼女に逃げられて、車にはね
られて、財布を落として…そうだ、それに足の小指をタンスに3回もぶつけたし、口内炎ば
っか出来たし、三十年間、毎週買い続けた少年ジャンプを一回買い忘れたし、すれ違った女
子高生に笑われたし…まぁ、それは僕のチャックが開いてたからだけど、…だけど…だけど
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