DENUO.
cast

下永瀬・・・♂
丸山・・・♂
片岡・・・♂
愛沢・・・♀
幽霊・・・♀
泥棒・・・♂





 廃病院のロビー。受付のカウンターと、ベンチっぽい椅子が数組。それらが、もれなく寂れている。
   舞台には男(下永瀬)が一人、息をひそめて座りこんでいる。

下永瀬「…………来たか」

上手から丸山登場。隠密っぽい動き。

下永瀬「……首尾は?」
丸山 「上々だよ、下永瀬くん。今夜ここに来るっていう情報は正しかったみたい」
下永瀬「……対象は?」
丸山 「僕が最後に見たのがトンネルを抜けて横断歩道を渡ろうとしたとこ。だから順調にいけばあと数分で玄関に着くね」
下永瀬「……俺たちの安全は?」
丸山 「保証済みさ。一応全部の部屋回ってみたけど、特に変わったところはないね」

    間。

下永瀬「…………」
丸山 「下永瀬くん?」
下永瀬「くくくく…………くはあーっはっはっは!」
丸山 「うおお」
下永瀬「はあああっしゃああ! でかしたぞ丸山。今日こそ、今日こそは片岡のヤロウに一泡ふかせてやるぜ。うあーっはっはっはっは!」
丸山 「うれしそうだね。下永瀬くん」
下永瀬「なあに言ってやがる。これが喜ばずにいられますか。片岡のヤローの鉄面皮がひきつり、焦り、悶えるさまを想像しただけで……うっほっほっほははは!」
丸山 「暗いな。電気つけよ」

   丸山、電気のスイッチを押す。

下永瀬「はっはっはっはってええ?」
丸山 「どうしたの下永瀬くん。あたかもカエルが踏み潰されたような汚い声出して」
下永瀬「いや、いくらなんでもそこまで汚くねえだろ……」
丸山 「そうだね。カエルに失礼か」
下永瀬「そっち? あ、いやてか何で電気ついちゃってんの? 廃病院だよなここ?」
丸山 「何を今さら。下永瀬くん、この病院が今も経営してるように見えるの? 急患でこんなとこ来ても死にに行くようなもんだよ」
下永瀬「いや、分かってるよ。とてもここがまだ経営してるようには見えねえよ。俺が聞きてえのはなんで電気がついてんのかって……」
丸山 「はっ……」
下永瀬「うわ。むかつく顔」
丸山 「別にたいしたことじゃないよ。電気回線と蛍光灯はまだ生きてたから。ちょっとそれを弄らせてもらっただけ」
下永瀬「すげえなお前。どこでそんなスキル習得したの!」
丸山 「それはそうと下永瀬くん」
下永瀬「あ?」
丸山 「……喜ぶのはいいけどさ、どうやって片岡くんたちを脅かすか考えてる?」
下永瀬「片岡くん、たち?」
丸山 「ん? なに? 僕変なこと言った?」
下永瀬「ああ、丸山。勘違いしているようだから言っておくが、脅かすのは片岡のヤロウ一人だ。愛沢にはキズ一つつけちゃならねえ」
丸山 「別に誰も傷つけようとは思ってないけど……。一応聞くけどどうして?」
下永瀬「当たり前だ! こっそり隠れて陰から女の子を恐がらせるなんざプレイボーイの風上にもおけねえ!」
丸山 「そここだわるんだ。あと下永瀬くん、自分で思ってるほどプレイボーイじゃないよ」
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