異なる羽
異なる羽


早川 深雪   中学二年生。物静かで、おとなしい性格
剣崎 翼    中学二年生。この間、転校してきた
先生      中学校の先生。二人の担任
園長      真昼の子供園を経営している園長
A       近所のおばさん
B       近所のおばさん
C       真昼の子供園の園児





   夏、高校の中庭。セミの声
深雪はベンチに座り、本を読んでいる

翼   (声だけ)見つけた!

   大きな声が聞こえ、深雪はため息をついて、本を閉じる

翼   (入ってきながら)やっと見つけた。こんなところで何してるの?
深雪  ……
翼   ねぇ、何してるの?
深雪  ……
翼   ねぇねぇ
深雪  ……なにかご用なんですか
翼   なんにも
深雪  用もないのに、私をさがしていたんですか?
翼   あぁ。お話ししようぜ
深雪  私にはお話することはありません
翼   そんなつれないこと、言うなよ。みゆみゆ
深雪  ……もしかして、そのみゆみゆとかいう身の毛がよだつものは、私のあだ名ですか?
翼   そう、早川深雪。だから、みゆみゆ
深雪  やめてください
翼   なんでさぁ、みゆみゆ〜
深雪  や・め・てください
翼   じゃあ、なんて呼んだらいい?
深雪  早川でいいでしょう
翼   え〜。つまんない
深雪  ……はぁ。あのですね、剣崎君。この際、はっきり言わせていただきますが、私の転校初日から今日まで、いったいどんな理由で私を追い掛け回すんですか?はっきり言って、迷惑なんです。ですから……
翼   好きだから
深雪  ……は?
翼   好きになっちゃったから
深雪  ……
翼   ……
深雪  な、なに言ってるんですか?冗談でも怒りますよ
翼   冗談なんかじゃないよ。ひとめぼれしちゃったんだから
深雪  いや、その、それは……
翼   みゆみゆは、俺のこと、どう思う?
先生  (声だけ)おい、剣崎!昼休み、俺のところに来るよう言っておいただろ!
翼   やっべ、忘れてた。じゃあ、また後でね

   翼は走り去る。それを見送る深雪

深雪  私は……私は……

   あたりが暗くなり、声だけが聞こえる

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