ラジオドラマ用「圏外」
「圏外」

人物
ヤマト(男、二十代後半)
ミネコ(女子高校生、ヤマトのいとこ)

  田舎の夜。親戚一同が集まって、大人
 たちが酒を飲みつつ話している。

ヤマト「ちょっと出て来るー」

  ガラガラと木のドアを開け、人気の
 ない砂利の庭を歩く。

ミネコ「ヤマちゃん」
ヤマト「おうあ!」
ミネコ「何よ、河童でも見た様な顔して」
ヤマト「ミネコ…夜にかくれんぼとかやめて
 よ、心臓に悪い…ただでさえ爺ちゃん家の
 庭広いんだからさあ」
ミネコ「ばっかじゃないのー?(笑う)」
ヤマト「あー、びっくりした…」
ミネコ「ね、ヤマちゃん、ツネヒロストア行
 くんでしょ?あたしも行く―」
ヤマト「え、行くけどさ…何してたの?」
ミネコ「携帯が圏外でさー」
ヤマト「ああ、ここまだ圏外なんだ」
ミネコ「庭ならいけるかと思ったけど駄目だ
 ね。早苗姉ちゃんもツネヒロストアまで行
 かないと入らないって。ホントだったわ」
ヤマト「うわーのどかだなー。それにしても
 お前危ないだろ、気をつけろよ」
ミネコ「何が」
ヤマト「夜中に携帯一個で外出るってさあ、
 一応女の子なんだから」
ミネコ「へーきだってこんくらい」
ヤマト「いやーだってねえ、ミネコちゃんも
 もう女子高生だよ?」
ミネコ「おっさんくさいよ、ヤマちゃん」

  二人、歩く。門を押して開ける音。

ヤマトM「いとこのミネコは、いつも俺の少
 し後ろを歩く。それは昔から変わらない。
 遠賀川の黒い水面が遠くに見えてきた。湿
 った匂いの風が吹く」

  夏の虫の声がする。

ヤマト「あーなんか、思い出すねえ」
ミネコ「何」
ヤマト「ちっちゃいころミネコさ、腰までス
 カートまくりあげて遠賀川入ってたよなー」
ミネコ「そういうのやめてー」
ヤマト「もうしてないよな?」
ミネコ「当たり前じゃん、ヤマちゃんさっき
 からあたしのこと、バカにしすぎ」
ヤマト「冗談だって。ま、年上の特権って奴
 かな」
ミネコ「ふーん、でもあの時、あたしが立ち
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