木村婚活事務所
題名:「木村婚活事務所」
作者:にゃがえ

登場人物
木村真一(きむらしんいち)
古田良子(ふるたよしこ)
白鳥綾香(しらとりあやか)
桜庭慶太(さくらばけいた)
真美(まみ)


     1.
     ここは、ビルの二階にある「木村婚活事務所」である。
     安っぽいテーブルや、安っぽいいすが並んでいる。
     部屋の一角には、小さな事務机。また、事務机の後ろには書類などを入れた棚がある。
     事務机の上には、電話、メモ帳、電気ポット、缶コーヒーなどが置いてある。
     その事務机では、一人の男(木村)が新聞を読んでいる。

木村 …なんだ、あの女優、再婚したのか…。…ん?四十二?さすが芸能人、若く見えるな。相手は一般人か。…しかも年下じゃないか。どこで知り合ったんだろ…。(新聞を
   めくって)…お、あの下着泥棒捕まったのか…。へー、二千点以上の下着を…へー…。

     と、机の上の電話が鳴る。

木村 あー、はいはい。(電話に出て)はい、こちら木村婚活事務所。…はい…えっ?…婚活を十人前?どういうことですか?婚活パーティーの問い合わせですか?…え?いや、
   予約って何ですか?あの、意味が分かりかねるんですが…。…いや、あの、店長というか、所長は私ですけど…。いや、あの、もしかして番号をお間違えじゃないですか?
   …いや、こちらはきむらやじゃなくて、木村婚活事務所ですけど。…あ、はい、はい、どうも、失礼します。(電話を切って)…全く、何だよ、きむらやって。十人前と
   か、予約とか、訳のわからないことを…。うちは婚活事務所だって言ってるだろ。何と間違えたんだか…。

     と、缶コーヒーを飲みながら新聞をめくる。

木村 あ、この広告、きむらや…とんかつ専門店、とんかつのきむらや…。とんかつかよ…。

     木村、新聞を畳んで机の上に置く。
     と、誰かが事務所の扉を叩く。

木村 おっ。はい、どうぞ。

     一人の女性(古田)が入ってくる。

古田 こ、こんにちは…。突然お邪魔してすみません。

木村 いらっしゃいませ!どうぞどうぞ、こちらへ。(と、安っぽいいすへと案内する。)

古田 あの…。

木村 どうぞこちらにお掛けになってください。あ、私こちらの木村婚活事務所の所長、木村真一と申します。(と、名刺を渡す。)

古田 あ、古田です。(と、名刺を渡す。)

木村 (名刺を見て)これはご丁寧に。古田さん、古田良子さんですね。どうぞよろしくお願いします。

古田 あの、所長さんが直々に応待してくださるなんて嬉しいです。

木村 いやいや、所長とは言っても、ここの事務所は私一人ですから。

古田 一人?

木村 ええ、見てのとおり小さな事務所ですから、私一人で十分事足りるんですよ。…あ、ちょっと待ってくださいね。今お茶を入れますから。…あ、しまった、お湯を沸かす
   のを忘れてました。

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