月を待つ人
『月を待つ人』


■登場人物
 横路軍平(よこみちぐんぺい・♂・32歳・新選組隊士)
 白川茂慶(しらかわしげよし・♂・40歳・兼鴇藩剣術指南役)
 島嵜美弥(しまざきみや・♀・27歳・薬種問屋の娘、晋衛の妻)
 白川綾音(しらかわあやね・♀・15歳・白川の娘)
 白川つる(しらかわつる・♀・36歳・白川の妻)
 斎藤平太郎(さいとうへいたろう・♂・30歳・白川の門下)
 加川まさ(かがわまさ・♀・56歳・兼鴇藩の筆頭侍女)
 宮田克之進(みやたかつのしん・♂・25歳・美弥の実弟、元彰義隊の関宿藩士)
 赤木修太郎(あかぎしゅうたろう・♂・25歳・元彰義隊の関宿藩士)
 木原敏信(きはらとしのぶ・♂・28歳・長州藩士)
 石野文蔵(いしのぶんぞう・♂・27歳・長州藩士、木原の部下)
 石野はる(いしのはる・♀・24歳・長州藩士、木原の部下)
 立川基頼(たてかわもとより・♂・30歳・新選組隊士)
 島嵜晋衛(しまざきしんえ・♂・32歳・元彰義隊の関宿藩士)


     プロローグ
     白川道場。白川がやってくる。ふと月のない夜空を見上げる。

白川  朔月……月のない晩……ですか。

     白川、懐から書簡を取り出し開く。

白川  今にしてみればかように思いし候。貴殿が月であるならば、私はその輝くを遮りし
    厚く重い雲であったのではなきやと。己が勝手は承知の上。されども願わくば頼み
    たき儀がありし故、かように筆をとりて候。我が願いにつきて語るが為は……(手
    紙から視線を外し)そう、出会い……いや、それより前のことから語る必要がある
    のかもしれませんね。あの日……上野が戦火に包まれた日のことから。

     慶応4年5月15日、上野寛永寺近く。辺りは雨。銃撃の音が鳴りやまない。
     そこに刀を手にした宮田と赤木がやってくると物陰に隠れる。

宮田  くそっ!!一向に近づけない!!

赤木  銃なんか使いやがって!そんなの武士って言えるのかよ!

宮田  そうだ!だからこそ俺らが負けるワケない!武士でないものなどに俺たちが……。

赤木  やめとけ!今出てったら……。

宮田  止めるな赤木!

     宮田、赤木の制止を振り切り物陰から飛び出す。しかし銃声は止んでいる。

宮田  ……あれ?

     そこに晋衛が駆けてくる。

晋衛  何をボーッとしてやがる!

赤木  晋衛さん!ひょっとしてこれ……。

晋衛  バンバン煩せぇ連中は叩っ斬った……けど、まだ死に足りねぇってか!

     そこに政府軍の兵士が刀を手に現れる。斬りかかってくるのを晋衛はみるみる
     蹴散らす。しかし一人逃がしてしまう。
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