惹句
A「『本国最大』!」
B「うーん……」
A「ダメ?」
B「ダメっていうか、そもそも何のキャッチコピー依頼されたか分かってる?」
A「保険会社でしょ?」
B「そう。保険会社のキャッチコピー」
A「分かってるよ」
B「でも保険会社と言っても、加入者は社長一家だけなんだよ」
A「それは……」
B「誇大広告なんてもんじゃないでしょ」
A「だねえ。じゃあ逆に、『本国最小』!」
B「それ見て加入しようと思う?」
A「思わない」
B「じゃあダメ」
A「ダメかあ」
B「何か他にないの?」
A「うーん……あのさあ、さっきから俺ばっかり考えてない? お前もなんか考えてよ」
B「えー、何だろう……『腹の中から墓の中まで』とか」
A「おー、いいねえ。最後まで面倒見てくれるんだっていう安心感があるねえ。語呂も良いし」
B「でもなあ、もっと力強いのが良いんだよなあ」
A「力強いの? えーっと、『貴様の命は預かった』とか」
B「あー、いいねえ。力強いねえ」
A「いや、違う! なんかこうもっと、風情のあるやつで!」
B「風情のあるやつ? えーっと、『桜花爛漫』とか」
A「おー、いいねえ。風情があるねえ。満開の桜が見えるよ」
B「でも保険会社関係ないよね」
A「それだ!」
B「えっ?」
A「既存の発想に囚われていては新しいものは生まれない!」
B「というと?」
A「見た人が本当に心惹かれるキャッチコピーはもっとこう斬新じゃなきゃいけないんだ!」
B「つまり?」
A「保険会社のキャッチコピーが保険会社の宣伝じゃなきゃいけないなんて考え方はもう古い!」
B「うん……えっ?」
A「保険会社のキャッチコピーが葬儀屋の宣伝して何が悪い!」
B「いや、だって……これがこうなって、ああなって、そうなって、こう……おおっ!」
A「な?」
B「凄いよ! 今まで誰も考えつかなかった!」
A「だろ? もっと褒めろ」
B「いよっ、天才! 色男! そうと決まったら早速キャッチコピー作ろう」
A「オッケー。そうだなあ、まずは『新鮮、安い』とか」
B「なに? 魚屋?」
A「八百屋」
B「八百屋かあ」
A「魚屋だと『新鮮、安い(↑)』になる」
B「そっか」
A「因みに肉屋だと『新鮮、安い(↓)』」
B「なるほど」
A「何か他、何か他」
B「えーっと、『一時間飲み放題』!」
A「なに? 居酒屋?」
B「青汁バー」
A「青汁バーかあ」
B「居酒屋だと『枝豆あります』になる」
A「そっか」
B「次、次」
A「えーっと、『冷やし中華始めました』」
B「『安い』!」
A「『美味い』!」
B「『コシがいい』!」
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