きよしこの夜
坂本「クリスマス。それは毎年十二月二十五日にやってくる聖なる日。世界三大宗教の一つキリスト教の元祖イエスの誕生日。でもまあ宗教に寛容過ぎるこの国ではただ単に赤い服を着て髭を生やした小太りの爺さんが不法侵入を決め込んで良い子たちにプレゼントをする日だ。つまり俺が何を言いたいかというと……今までサンタ・クロースだったんだ、俺」

小杉「夜中に友人から電話が掛かってきました。クリスマスの説明をされサンタ・クロースの説明をされ、謎の告白をされました。……彼の真意は分かりませんが、取り敢えず会って話を聞くことにしました」

坂本「ごめんな、こんなに寒い中、公園まで呼び出して」
小杉「別に良いけど」
坂本「今までサンタ・クロースだったんだ、俺」
小杉「……」
坂本「公務員採用決まったって言ったじゃん。あれ」
小杉「サンタって公務員だったんだ」
坂本「うん」
小杉「今までってことは今は違うの?」
坂本「懲戒処分食らっちゃった。退職金も出ねえよ」
小杉「何したの」
坂本「飲酒運転」
小杉「あーあ」
坂本「トナカイの」
小杉「トナカイの?」
坂本「寒かったからちょっとウォッカで体暖めただけなんだよ」
小杉「馬鹿だなあ。いくら寒くても飲酒運転は駄目だろ」
坂本「トナカイで走ってたらさ」
小杉「パトカーが近づいてきて」
坂本「止められて」
小杉「トナカイを」
坂本「検査されて」
小杉「一発だな」
坂本「しょっ引かれて」
小杉「罰金払って」
坂本「職場に連絡行って」
小杉「懲戒処分」
坂本「崖を転がり落ちるようだった」
小杉「掛ける言葉も見当たらない」
坂本「寮生活だったからさ、この寒空に叩き出されて寝泊まりする場所もないんだ」
小杉「えっ、じゃあ今どこで生活してるの?」
坂本「そこ」
小杉「……何あれ」
坂本「俺の家」
小杉「あっ……」
坂本「まあ上がれよ」
小杉「いや……」
坂本「遠慮すんなよ」
小杉「ちょっと待って」
坂本「なに」
小杉「段ボール?」
坂本「そう。立派だろう」
小杉「立派だな。段ボールだけど」
坂本「冬の寒さに耐えるために二重扉を採用」
小杉「凄いな。段ボールだけど」
坂本「更に雪が積って潰れないよう屋根に角度をつけました」
小杉「安心だな。段ボールだけど」
坂本「ハンズで千円弱」
小杉「住み心地は」
坂本「超快適」
小杉「本音は」
坂本「最悪」
小杉「取り敢えずうち泊まるか? 四畳半のワンルームだけど」
坂本「お願いします。炊事洗濯家事親父何でもします」
小杉「親父って何すんの?」
坂本「ありがたいなあ」
小杉「親父って?」
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