捨てられない少女
捨てられない少女
楽静

登場人物
アカツキ アユミ(暁 歩)   高校三年生。本好き。
ランドウ ユラ (藍銅 夢来)高校三年生。活発。新しいもの好き。
ロクショウ イツキ(緑青樹) 高校三年生。男勝りな少女。
アユ母   アユミの母。世話好きの心配性。
ユラ母   ユラの母。ヤンママ。
オバサン  的屋のおばさん
※ 四人でやる場合、イツキはユラ母とオバサンも兼ねる。

    三月の中旬の一日だけの物語。
    舞台上にはアユミの部屋。八畳ほどの広さがある。
    両親は割と良い生活をしている。
    引っ越しの前日のため、いたるところに段ボールがある。
    また、整理しきれていないものが当たりに転がっている。
    場面は過去に戻ったりもするが、
    舞台上の物を転換のためどかしたりはしない。
    全て登場人物と観客の創造力で過去シーンは作られる。


1 三月某日 アユミの部屋。

    いい雰囲気の音楽と共に舞台は明るくなる。
    しかし、その音楽を上回るように、口げんかが聞こえてくる。
    アユ母とアユミだけが舞台上に浮かび上がってくる。

アユ母 本当に分かってるの? 引っ越しは明日なのよ?
アユミ 分かってる。
アユ母 分かっててこんな状態!?
アユミ 今からやるところだったの!
アユ母 明日になっても片付いてなかったら、全部捨てるから。
アユミ なんでそんな話になるの!?
アユ母 あんたが片づけられないからでしょ!? これくらい捨てられなかったら、これから先どんどん捨てられない物ばかりたまっていって、家の中だけじゃなくてベランダや外にまでゴミがあふれるようになって、それでいつの間にか行政の指導が入って、テレビが「こちらが町で有名なゴミ屋敷です」なんて報道される中、ゴミをどんどん捨てられるようになるのよ!
アユミ 大げさすぎる!
アユ母 例えばこれ。やたら小さいTシャツだと思うけど、流石に着られないわよね?

    と、アユ母が手に取るのは子供用のTシャツ。
    なんか変なシミとかある。

アユミ もしかしたら、急に子供に戻ってしまう薬とか飲まされることがあるかもしれないから。「あれ、頭脳は大人なのに、体は子供!? 大変。着られる服がない。っと思ったけど、こんなところに昔の服が! 持っていてよかった!」
アユ母 ないわね。
アユミ ないけど。
アユ母 じゃあいいわね捨てて。(と、捨てようとする)
アユミ ダメ!(と、奪う)分からないくせに口出ししないで!
アユ母 あんたのことを思って言ってるんでしょう!?
アユミ あたしのことは放っておいて!
アユ母 こんなゴミを持っていったら、引っ越し先もすぐゴミだらけになるわよ!
アユミ ゴミじゃない! いい加減出て行ってよ! 出てけ!
アユ母 勝手にしなさい!

    と、アユ母は怒って部屋を出ていく。


2 ユラとアユミ?@

    ひとりになったアユミは床に散らばったものを手にする。

アユミ いる。いる。いる……。
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