ルームシェア


  野々村 乃之歌  (ののむら ののか)
  蜂須賀 誠二   (はちすか せいじ)
  相澤 智美    (あいざわ ともみ)
  千葉 孝太郎   (ちば こうたろう)
  若本 菜月    (わかもと なつき)


  舞台上はとある一軒家のリビングルーム。
  舞台中心にはローテーブルがあり、それを囲むように三つのソファー。
  上手奥にはキッチンがあり、そこからバスルームへと繋がっている。
  また下手奥には二階へ通じる階段、下手手前には玄関に通じる道。
  舞台奥、キッチンと階段の間に扉が二つ。


■■■

  0

  客入れの間は常に、僅かではあるが都会の喧噪が聞こえ続けている。
  人のざわめき、車や電車の通過音、とおりゃんせ…。
  開幕の時間になると喧噪にまぎれて音楽が入って来る。
  音楽、喧噪共に段々と大きくなり、それに合わせて会場はゆっくり暗転していく。
  全ての音が途切れるとともに明転。

  リビングルームに集まる五人の男女。
  五人、真ん中のローテーブルを囲んで黙り込んでいる。

蜂須賀  悪い、嘘ついた。
菜月   え?
蜂須賀  俺さ、諦めがわりぃんだわ。現実はこんなもんなんですって言われてもさ、はいそーですかって受け入れることが出来ねぇんだわ。どうにか変わんねぇかなって思うわけ。
四人   ……。
蜂須賀  人間ってさ、ちっぽけで、やれることなんてたかが知れてんだよ。それでもほんの少しでもいいから、何か変わんねぇかなって、変えられるんじゃねぇかなって。

  携帯を操作する蜂須賀。

野々村  …どういうことですか? 誠二さん。
蜂須賀  …孝太郎、よく見てろ。俺からのプレゼントだ。
野々村  誠二さん!

  蜂須賀が携帯のボタンを押すとともに、暗転。
  音楽。舞台背景にタイトルが映し出される。

  『ルームシェア』

  作、演出、キャストとOPが続く。
  OPが終わるとゆっくりと舞台下手の野々村に光が集まる。
  野々村、辞書を開いており、それを読む。

野々村  ルームシェア。住まいの居住形態のひとつ。親族関係や恋愛関係にない他人同士が、ひとつの住居を共有して居住することを示す。(辞書を閉じ)…私たちは一年前、ネット上で知り合いました。とある掲示板です。その掲示板はもともと、当時話題になっていた政治犯罪について、素人がおのおの勝手な意見を語り合うための、つまりはどこにでも転がってるよくある掲示板でしたが、一通りネタを語り尽くした私たちの話題は、段々と日常の他愛のないものへ移り変わり、いつしかその掲示板には、その日あった、ちょっとした出来事を語り合うような、そんな妙に仲のいいメンバーだけが残っていました。そんな私たちにはいくつかの共通点がありました。ひとつ、東京都内在住。ふたつ、二十代。みっつ、お金がない。よっつ、引っ越したがっている。誰が言い出したのかは思い出せません。じゃあこの五人で、ルームシェアをしないか。そうして集まったのが今から約二ヶ月前のことでした。

  暗転。
  舞台背景に文字が投影される。


■■■

  1

1/20

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム