デッドエンドの銃声
殺し屋シリーズ:1話
 バー「DEAD END(デッドエンド)」店内。

 女性の二人組がカウンターに並んで座っている。
 一人は手元のスマートフォンの操作に忙しい。
 二人と向かい合う形でマスターらしき男が静かにグラスを拭く。

シャーク:てめぇ、もう一回言ってみろ!
センチピード:……。
シャーク:てめぇに言ってんだよ! 耳付いてんのか!
センチピード:あ、ごめん。
センチピード:このクエスト終わってからでいい?
センチピード:ちょうど今、アツいのよね。
シャーク:マジでぶっ殺すぞ。スマホ置け。
センチピード:金にならない殺しなんてやるの、あなた。
シャーク:てめぇの減らず口を閉じられるんなら、喜んでやってやろうじゃねぇか。
センチピード:何カッカしてんのよ。
シャーク:だから、もう一回言ってみろっつってんだ!
センチピード:「鮫のくせに、いちいち止まるのね」
シャーク:そう、それだよ。
シャーク:どういう意味だ。あ?
センチピード:鮫って、止まらないのよ。
センチピード:止まると呼吸ができなくなって死ぬから。
センチピード:それなのに、あなたは立ち止まってばかり。
シャーク:何だと……。
センチピード:迷うくらいなら、辞めなさいよ。
センチピード:それでもプロ?
シャーク:てめぇ!

 荒々しい口調の女が、傍らの連れに掴みかかった。
 マスターの男がそれを制する。

マスター:お二人さん、そのあたりで。
シャーク:……ちっ。

 穏やかながらも有無を言わさぬマスターの声に、女は手を離す。

センチピード:ごめんなさい、マスター。
センチピード:この子、生理中なの。
シャーク:ちっげぇよ、バカ! 殺すぞ!
マスター:何かあったんですか。
センチピード:今日の仕事ね、マトが子連れだったのよ。
センチピード:小さい子に弱いのよねぇ、この子。
マスター:引き金が鈍りましたか。
シャーク:鈍ってねぇよ。きっちりやった。
センチピード:そ。なのに子どもやるといつもウジウジしちゃって。
シャーク:してねぇよ、黙れ。
マスター:良心が痛みましたか。
シャーク:ハッ、マスター、笑わすなよ。
シャーク:良心だぁ? 何の冗談だよ。
センチピード:違うの?
シャーク:そんなもん持ってたら仕事にならねぇだろうが。
シャーク:痛める資格なんざねぇよ、あたしは。
センチピード:心配しなくても、あなただけじゃないわ。
マスター:左様ですな。
マスター:因果な商売であるとは思いますが世の摂理というものです。いつの時代でもね。
シャーク:……ふん。
センチピード:おっしゃる通り。
センチピード:マスター、ジントニックちょうだい。
マスター:かしこまりました。
 
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