宇都宮【漫才台本】
A 宇都宮が増殖してるぞ。
B こわっ。何それ。宇都宮が増殖?
A 増殖。
B 増殖?
A 増殖。
B 三回言ったな。宇都宮が増殖ってどういうこと?
A 人って普通、宇都宮ってあそこら辺にあるなって思ってるじゃないですか?
B はい?
A 人って普通、宇都宮って言ったら、あぁ、あそこら辺な、って思うでしょ。
B 普通どうとかってあるかどうか分からんけど、まぁ言いたいことは何となく分かるわ。北関東の栃木県の真ん中ら辺みたいな、そういうことな。
A それがあっちにもこっちにもあるのよ、今現在、宇都宮。
B ないないない。宇都宮って言ったらだってあの辺でしょ。
A 今、あの辺と、あの辺と、あとあっちの方にも二つ三つあるわ、宇都宮。
B え、どっち?どの辺?
A 増殖してる。
B 市でしょ? 宇都宮って市だよね? 市って増殖する?
A する。
B するの? 合併とかじゃなくて?
A 増殖。宇都宮が初めてだけどな。
B そうなの? 史上初とかだったら宇都宮の人、喜ぶかも分からんけど。
A 餃子に飽きたか?
B 飽きてない飽きてない。宇都宮と言ったら餃子の街。
A 宇都宮にあっちからもこっちからもこられたら、けっこう圧迫感あるな。
B 確かに人口五十万の大都市だけど。でもよく分からんけど、そのデカい宇都宮があっちにもこっちにもあったら、もともとそのあっちとかこっちにあった別の市とか自治体はどこ行ったの?
A 分からん。
B あ、そこは分かんないんだ。
A 気配は感じないな、もう。
B マジでどこ行った? てか、お前、普段からあっちこっちの自治体の気配とか感じてるんだ?
A けっこうな。動いたりしたら分かるわ。
B いや、市とか動かないから。
A 動くよ。
B 動くの?
A 三歩進んで二歩下がるくらいのことはわりとしてるな。それ、結局一歩しか進めてないやつだよなっていつも思うんだけど。
B いやいやいや、そこじゃないし。あれでしょ、三歩進んで二歩下がるとか、比喩的な意味でってことでしょ?
A 比喩?
B 比喩、通じない?
A 分からんけど、でも動いてるよ、どこの自治体も。
B そうなの? それは知らなかったわ、この年まで。
A でも宇都宮はちょっと普通じゃないわ。すたすた歩きはじめてるし。
B すたすた? 大都市が?
A だからやばいと思う。
B 何なの宇都宮。え、何、増殖して、すたすた歩きはじめて、これからどうなるの? 人類滅びる?
A それもありえるな。
B それくらいのノリ?
A おれも宇都宮とか全然油断してたわ。
B 油断とかそういう話?
A 昨日も、なんかいきなり電話かかってきて、ひょっと見たら、ぬおっ!てなって。宇都宮。
B こわっ! って電話はかけてこないわ、さすがに。宇都宮って出たなら登録されてるし。
A 来るとこまで来たか!ってなった。
B お前の友だちにいるんだろ、宇都宮ってやつが。
A え?
B いるんだろって。友だちに、宇都宮ってやつが。
A いや、いるんだけど。
B ほら!
A でも、もうおれの知ってる宇都宮じゃなかったの。
B はい?
A もう宇都宮になりかかってるところだった。
B ごめん、意味分からない。
A あいつ、おれはもうダメだ!に、逃げろ!言ってた。
B に、逃げろ!って言った。
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