時限式椅子取りゲーム
「時限式椅子取りゲーム」

謎の声
少女
少年
女性


SE   警告音
謎の声   「一つだけ選びなさい。」
SE   しずくの落ちる音
少女   暗がりの中だった。広いような狭いような不思議な空間。発した声は泡(あぶく)に変わる。目の前には椅子が一つ。その向こうにこちらを見つめる子がいた。
少年   暗がりの中だった。広いような狭いような不思議な空間。発した声は泡(あぶく)に変わる。目の前には椅子が一つ。その向こうにこちらを見つめる子がいた。
少女・少女  この子と私(僕)は、違う形をしていたけれど、おんなじなのだとわかった。
少女   私はその子から目を逸らすことができなかった。
少年   僕はその子から目を逸らすことができなかった。
少女   いつからここに居るのか
少年   どこからここに来たのか
少女・少年  覚えていることは何もなかった。それでも、この子を見ていると何故だか懐かしい気持ちになる。
遠くから、女性の鼻歌が聞こえる。
少女・少年  柔らかい音が聞こえる。心地よくて、眠たくなる。
女性   「名前は、もう考えてあるの。女の子だったら〇〇。男の子だったら○○。……女の子でも、男の子でも、健康でさえいてくれたら、それだけで幸せ。」
少女・少年  この声の人に会いに行きたい。会いに行かなきゃいけない気がする。
SE   警告音
少女・少年  突然大きな音が空間に響く。
謎の声   「一つだけ選びなさい。」
少女・少年  その言葉に心がざわついた。
謎の声   「一つだけ選びなさい。」
少女・少年  ……目の前にある椅子は一つだけだった。
謎の声   「一つだけ選びなさい。」
少女・少年  理解する。ここで『お別れ』を選ばないといけないと言うことを。
女性   「早く会いたい。」
少女・少年  「私も(僕も)会いたい! 」
少女・少年  見つめ合う。そしてどちらからともなく歩み寄る。二人の間には椅子が一つ。向かい合ったまま両手をつなぎ、額を合わせる。……この子と、別れたくない。けれど。
少女   私は選んだ。
少年   僕は選んだ。
鳴り響く警告音、一つだけ選びなさいという声が繰り返され、段々と音大きくなっていく。
少女・少年  「さようなら。」
突如、警告音と謎の声が止まる。
SE   しずくの落ちる音。
女性の鼻歌が聞こえる。
SE   赤ちゃんの鳴き声。フェードアウトしていく。

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