セレスティアの炎
殺し屋シリーズ:13話
 夜の更けきった大都市の一角。
 外れへと続く仄かな街灯の照らす道を男女が歩いている。
 やがて女性が先を歩く男性の背中に話しかける。

ベレッタ:……どういうことッスか、それ。
ウルフ:言葉の通りだ。お前は店内には入るな。
ベレッタ:一人でやる気なんスか?
ベレッタ:手段を選んでる場合じゃないんでしょ。
ウルフ:相手が一人とは限らん。
ウルフ:外に構えている輩は任せると言っているんだ。
ウルフ:中の連中は俺が殺(や)る。

 ため息をつくベレッタ。

ベレッタ:何か私、ダーリンの性格読めてきたッス。
ウルフ:何?
ベレッタ:その回りくどい優しさやめてもらえませんかね!
ベレッタ:いや嬉しいんスよ?
ベレッタ:でもねぇ、今さらじゃないッスか。
ベレッタ:乗り掛かった舟ってやつッスよ。
ベレッタ:何の為に手ぇ組んだのかわからないッス、これじゃ。
ウルフ:従う気がないのなら、パートナー関係は解消だ。
ベレッタ:はぁ!?
ウルフ:今後は余計なトラブルに首を突っ込むのはやめておけ。

 ベレッタを置いて先へと歩いていくウルフ。

ベレッタ:ちょちょちょ、待ってくださいよ!
ベレッタ:勝手すぎるッス! 待ってってば!
ウルフ:……お前はもう十分によくやった。
ベレッタ:えっ……。
ウルフ:一人でもやっていける程の基盤はできた。
ウルフ:下地が優れている分、堅実に仕事をこなしていけば俺を凌(しの)ぐ実力は持っている。
ベレッタ:そ、そんなことが聞きたいんじゃなくってですね。
ベレッタ:ブージャムを殺(と)る為にここまで一緒にやってきたんじゃないッスか。
ベレッタ:利害が一致してるんでしょ。
ウルフ:元はと言えばお前が勝手に付いてきただけだろう。
ベレッタ:いや、まぁそうッスけど……。
ベレッタ:あぁもうシャークさんの気持ちがわかってきたなぁ!

 ガシガシと頭を掻くベレッタ。
 顔を上げ、鋭い視線でウルフを見る。

ベレッタ:いいッスよ、それなら私も勝手にやらせてもらうッス!
ベレッタ:パートナー解消結構ッスよ!
ベレッタ:赤の他人になろうが勝手に付いていきますから!
ベレッタ:文句ないでしょ!?
ウルフ:……好きにしろ。俺に止める権利はない。
ウルフ:ただ命の保証はないぞ。
ベレッタ:殺し屋にそれ言います?
ベレッタ:いつもないじゃないッスか、保証なんて。
ウルフ:ゲームとの違いは理解できているようだな。
ベレッタ:ご心配なく。死ぬ予定はねッスから。

 静かに笑みをこぼし、再び歩き始めるウルフ。
 その背中を追っていくベレッタ。

 バー「デッドエンド」には一夜限りの明かりが灯る。
 カウンターにて一人、静かにグラスを拭いているブージャム。

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