ツギとハギ
ツギ:「なぁなぁ、まだみつからないのー!」
ハギ:「こら、邪魔をするなっ。そんな腕を引っ張られちゃ、俺の腕が取れちまう」
ツギ:「そうしたらぼくとおそろいだねやったぁ!」
ハギ:「なにがやったぁ!だ!嬉しそうに言うんじゃない。俺の腕が取れたら、お前がぽろぽろ落とす部品を拾って直せなくなるだろ」
ツギ:「なんでぼくのブヒンはぽろぽろおちゃうんだろうなぁ。ハギみたいにしっかりつくられてたら、もっといっぱいあそべるのに」
ハギ:「別に良いことばかりでもない。おっ、あったあった。あったぞ、ツギ」
ツギ:「ようやくみつかった?」
ハギ:「見つけたからちょろちょろしないで座れ。取れた部品をはめてネジをまわすから」
ツギ:「じっとしてるのにがてだから、はやくしてね」
ハギ:「分かった分かった。……ここをこうして、こうする…」
ツギ:「うわ!いたい!ハギ、いたいってば!」
ハギ:「我慢しろっての。ツギが騒いで色んな部品を落っことすのがいけないんだからな」
ツギ:「ほんとうにブヒンってこれであってる!?あいたたた!」
ハギ:「よし、今度は落っこちないようにきつくネジをしめたから大丈夫だろ」
ツギ:「ハギのなおしかたはらんぼうだ」
ハギ:「文句ばっか言うと絶交するぞ」
ツギ:「それはやだよ!ごめんなさい」
ハギ:「他に言うべきことがあるだろ?」
ツギ:「えっと、あそぼ?」
ハギ:「ありがとう、だ!全く、本人の口から言わせるんじゃない」
ツギ:「だって、これでまたあそべるでしょ?」
ハギ:「また遊びすぎると部品が落っこちるぞ」
ツギ:「そうしたらまたハギがなおしてくれるだろ!」
ハギ:「分かった、分かったから引っ張るなって」
ツギ:「やったぁ。じゃあじゃあなにしてあそぶ?!おにごっこ?きのぼり?」
ハギ:「どうせ全部やりたいって言うんだろ。どれからでもいーよ」
ツギ:「さっすがハギ!わかってるね!じゃあまずはきのぼりだ!」
ハギ:「あっ、待てよツギ!そんな走ると転ぶぞ!」
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ツギ:「よいしょよいしょ!……ふわぁ!たっかーい!」
ハギ:「良い眺めだな」
ツギ:「ねぇねぇ、ハギ!むこうでつちけむりがたってるよ?あれなあに?」
ハギ:「あぁ、また我楽多(ガラクタ)兵士たちが戦争してるんだろ」
ツギ:「せんそう?たたかうってこと?たのしいの?」
ハギ:「戦争に勝って生き残ったら、また神様が拾って遊んでくれるっていうくだらない決まりがあるんだよ。本当かどうかも解らないけどな」
ツギ:「ふぅん」
ハギ:「というか、そんな決まりも知らないのか、ツギ。こういうのは、ここに来たときに勝手に頭ん中にあるはずだけど」
ツギ:「んん?しらない。ハギはせんそうしないの?」
ハギ:「しない。棄(す)てたくせにまた拾うなんて、ただの気まぐれだ。いつまた棄てられるかわからないなんて、嫌だろ」
ツギ:「そっかあ」
ハギ:「お前は?ツギ。戦争に、行きたいか?」
ツギ:「んーん。ぼくはハギとあそんでられればいーや。ハギはぼくのことみすてないだろ?」
ハギ:「さぁな」
ツギ:「えへへ」
ハギ:「なんだよ」
ツギ:「てれやさんだなぁ。ハギはまったく」
ハギ:「別に照れてないからな!ツギが無茶ばっかしてあきれたら、俺はいなくなるかもしれないからな!」
ツギ:「そんなコトしないよ、ハギは」
ハギ:「はぁ!?なんでわかるんだよ!」
ツギ:「わからないけどわかるよ。だってさ、どんなにかわっていて、おかしい、がらくただらけのこんなまちでも、たいようはかならずのぼるんだ」
ハギ:「そんなこと当たり前だろ」
ツギ:「だから、ぼくにとっては、それくらいあたりまえのことなんだ。きみがぼくをみすてないってことは」
ハギ:「………」
ツギ:「もちろん、ぼくもハギひとりにしてはどこもいかないよ」
ハギ:「……この世界で一番変わってるのはお前だな、ツギ」
ツギ:「えーっ、なんで!?」
ハギ:「でもまぁ、そうだな」
ツギ:「?」
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