モスコミュール
登場人物
 朝音(ともね)・・・・・・新卒の社会人。大学まで実家暮らしでバーへ行くことに憧れを持っていた。
 深夜(みよ)・・・・・・バーの常連。切長な目で黒髪のストレートが綺麗な女性。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 朝音 「社会人になるのと同時に、私は家を出た。大学までずっと実家暮らし。門限は厳しく、私は夜の街というのを知らなかった。私はバーという場所に憧れを持っていた。社会人になったら、一人暮らしを始めたら、お気に入りのバーを見つけてその店の常連になることが私の夢だった。仕事を始めて3ヶ月。私は遂にとあるバーにたどり着いた。そして、ある出会いをした』
 
 カランカラン(バーの扉が開き、ベルが鳴る。朝音が店に入る)
 
 深夜 マスター、ブラッティメアリーいただけるかしら?
 
 朝音 『お店に入ってすぐに飛び込んできたのは切長の目で黒髪ストレートがとても綺麗な女性だった。佇む姿はまるでヨルガオのように美しかった。私は吸い込まれるかのように彼女の隣に座った』
 
 深夜 なんのようかしら?
 朝音 へ?
 深夜 あなた。一人で座っている女性の隣に座ってくるなんて随分いい度胸してるわね。
 朝音 ああ。ごめんなさい。あなたがあまりにも美しかったのでつい・・・・・・
 深夜 ・・・・・・何?ナンパなの?
 朝音 ・・・・・・え?
 深夜 私、そういうのはお断りなんだけど。
 朝音 そ、そんなつもりじゃ・・・・・・私はただ、あなたとお友達になりたいなって・・・・・・
 深夜 私はあなたを含め、人に興味ないの。どこか違うところに行ってくれるかしら?
 朝音 ひ、ひどい。そんな言い方しなくたって!
 深夜 ・・・・・・私が離れればいい話ね。不快だから次私を見かけても話しかけないでくれる?(席を立つ)
 
 深夜 『私に近づいてくる人間は男女問わずにそこそこいる。だけど私は彼らに構うつもりはない・・・・・・少々鬱陶しいとすら思う。私は誰とも馴れ合わない。私のためにも、そして相手のためにも。彼女に対しても同じ。だけど彼女はめげることなく、私を見つけては声をかけてきた』
 
 朝音 あ、いた。深夜ちゃん。
 深夜 ・・・・・・私に話しかけるなと言ったでしょう?それにどうして名前を知ってるのよ。
 朝音 マスターから聞いたの。教えてって言ったらすんなり教えてくれたよ。
 深夜 ・・・・・・マスター。
 朝音 そんなにマスターのこと睨まないでよ。あ、ちなみに私は朝音。明石朝音。いいじゃない名前くらい。
 深夜 私には近づかないでって言ってるでしょ?
 朝音 やだ!
 深夜 どうして?
 朝音 言ったでじゃん。私、あなたとお友達になりたいって。
 深夜 私は友達になりたくないの。
 朝音 ねえ、少しは相手のことを知ってから判断したらどうなの?
 深夜 ・・・・・・その必要はないわ。
 朝音 深夜ちゃん、もしかして人が怖いの?
 深夜 は?
 朝音 だって、そういう態度、私だけじゃないよね?なんだか、人とお話しするの、怖がってるように見える。
 深夜 うるさいわね! あなた、私の何がわかるっていうのよ!もう、いい加減にしてちょうだい!(席を立ち、店を出る)
 
 深夜 『あんなに声を張り上げたのはいつぶりだっただろうか。私が怖がっているって?冗談じゃない。そんなはず・・・・・・あるわけがないわ。
  彼女は・・・・・・明石朝音は次の日も、また次の日もバーに現れた。そして彼女はめげることなく私の隣に座ってきた。そんな彼女に・・・・・・私は根負けした。彼女と出会ってからどれくらい経っただろうか。朝音は私よりも先にバーカウンターに座っていた。私は彼女の横の席に座った』
 
 朝音 珍しいじゃん。深夜からこっちにくるなんて。
 深夜 私だって気が向く時があるのよ。
 朝音 マスター、モスコミュール2つ。
 (マスターが2人の前にモスコミュールを置く)
 朝音 私の奢り。
 深夜 奢る余裕なんてあるのね、あなた。
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