忌付憑
タイトル『忌付憑』
               高凪なおと

【登場人物】

立木周明(たちきしゅうめい・23・男)…大学4年生(一浪一留)。理工学部。絹江のストーカー。卒業はできそう
 だが就職活動は上手く行っていない。
野上紀子(のがみのりこ・21・女)…大学3年生。名のある神社(野上神社)の跡取り。商学部。絹江の幼馴染。
神宮寺翔(じんぐうじかける・21・男)…大学3年生。ボクサーで一部リーグ所属のキャプテン。商学部。幽霊は苦
 手。
荒巻大助(あらまきだいすけ・22・男)…大学3年生(一浪)。商学部。色々手を出すが上手くできないとすぐに辞
 めてしまうためバイトもサークルもやっていない。
岡本絹江(おかもときぬえ・21・女)…大学3年生。文学部。多数の男に思わせぶりな素振りをするが他に彼氏(マ
 ー君)あり。
れい子(れいこ・不明・女)…幽霊?話す事ができない。(男性でも可。その場合、名前はれい)
パパ・・・野上の父。声のみ。

※怨霊は兼務
A・・・立木
B・・・野上
C・・・神宮寺
D・・・荒巻
E・・・絹江
F・・・れい子


【本文】

○    暗転のままの舞台
   舞台上の社にスポットライトが当たっている。社(やしろ)には人が通れる大きさの扉があり、しめ縄がしてあ
   る。
NA(立木)「キツツキ様って知ってる? 忌まわしきを付して憑りつくと書いて、“忌付憑”って言うんだ。昔、人
 の願いを叶えるのと引き換えに呪いを振りまく悪霊がいて、ある時、とんでもない願いの代償に何十人もの人が呪い
 殺された。被害の大きさに恐れをなした町の人は、この地方で一番有名な神主に除霊を依頼した。でも悪霊が強すぎ
 て有名な神主でも太刀打ちできずに殺された。それを見た神主の弟子達が悪霊を封印したんだ」



○    森の中
   うっそうと茂る森の中。社の周囲に狐の像が2個置いてある。
   舞台袖の近くに木があり、木の裏から舞台袖に行けるようになっている。
   スマホを見ながらひとりで解説をしている立木周明(たちきしゅうめい・23・男)。
立木「で、その悪霊を封印したのがこの社なんだって。大学の近くにこんな心霊スポットがあるなんて面白いよね・・
 ・」
   間。
立木「・・・(ブツブツと)やぁ奇遇だね。もしかして肝試し? 俺も俺も。ところでキツツキ様って知ってる? 忌
 まわしきを付して憑りつくと書いて、“忌付憑”って言うんだ・・・(つぶやきが尻すぼみになる)・・・おし!」
   スマホをしまう立木。
立木「何十人も呪うとかどんな願いだったんだろ。でも願いはちゃんと叶えてくれるって事なんだよな」
   立木、左右を見て誰もいない事を確認する。
立木「(手を合わせて)絹江さんと仲良くなれますように! あとストーカーとか言われませんように!」
   間。
立木「変な願いじゃなきゃ大丈夫だよな」
   上手から人の気配を感じ、木の後ろに隠れる立木。
   荒巻大助(あらまきだいすけ・22・男)、岡本絹江(おかもときぬえ・21・女)が歩いてくる。絹江は怖が
   りながら荒巻の服の端をつまんでいる。
   荒巻の手には缶ジュース。
   2人に続いて野上紀子(のがみのりこ・21・女)がスマホを見ながら登場する。
絹江「ねぇ、紀子~。これ絶対出るよね! 絶対出るって~! ねぇ、紀子~。・・・紀子、聞いてる?」
野上「あー出るかもね」
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