俺達のフォルトゥナ
0:大学
0:宮田が歩いている
0:携帯電話で誰かと話している

宮田:もしもし? あー、成瀬? どした。
宮田:え? 何言ってるかわかんねぇって。
宮田:研究室まで来い?
宮田:いや、あのさ……って、切れてるし。
宮田:ったく、何なんだよ、あいつ。
宮田:俺も暇じゃねぇんだっつうの。
宮田:レポートの期限やばいのにさぁ……。

0:宮田、科学研の扉を開ける

宮田:成瀬ェ?
宮田:何、用事って。
宮田:お前、何言ってんのか全然わかんねぇよ。
宮田:何でそんなテンション高い……。
成瀬:宮田っ!
成瀬:落ち着いて聞いてくれ。
宮田:はあ?
成瀬:お前は今、歴史的な瞬間に立ち会っている。
成瀬:今日という日は史実に刻まれることになるだろう。
宮田:帰っていい?
成瀬:待てよ!
宮田:あのさぁ、俺、レポートやんなきゃ不味いのよ。
宮田:これ以上単位落としたら卒業できねぇよ。
成瀬:単位など犬に食わせておけ!
宮田:マジで何なの。
成瀬:いいか、よく聞け。
成瀬:ついに完成してしまった。
成瀬:我が科学研の技術の粋を結集した発明である、アレが。
宮田:どれだよ。
成瀬:「フォルトゥナ」がッ!

0:沈黙

宮田:……嘘だろ? 冗談やめろって。

0:成瀬、コントローラーらしきものを取り出す

成瀬:これだ。
宮田:いや、成瀬、さすがに信じねぇよ?
宮田:俺もそこまで馬鹿じゃねぇからな。
宮田:お前もそうだと信じてる。
宮田:早くそのNintendo Switchのコントローラーはしまえ。
成瀬:宮田。俺は発明に関して、決して嘘はつかん。
宮田:……。
成瀬:混乱しているようだな。
宮田:当たり前だろ。
宮田:これって……あれだろ?
宮田:お前が長年、ずっと……。
成瀬:ああ。
成瀬:気の遠くなるようなトライアンドエラーを繰り返し、
成瀬:俺の青春の全てを注ぎ込んだ、世紀の大発明。
成瀬:対ホモサピエンス用リモートコントローラー。
成瀬:通称、「フォルトゥナ」。
宮田:あり得ねぇ。
成瀬:偉大なる発明は、いつだって理解の範疇(はんちゅう)にはない。
成瀬:迫害の歴史だ。
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