コキアの紅く染まる頃
0:秋のコキア園
0:丘の上から、コキアを一望できる
0:朔次とシズル、並んで景色を眺めている

シズル:見て。向こうの方まで、全部綺麗に赤くなってるわ。
シズル:今年はまた数が増えたのかしら。
シズル:良い眺めね。
朔次:そうだね。
シズル:寒くないの、朔次さん。
朔次:大丈夫だよ。
朔次:風が気持ちいいくらいだ。
シズル:そう。
シズル:あなた、体が弱いからね。
シズル:冷やしては駄目よ。すぐに風邪ひくんだから。
朔次:そうかな。
朔次:まぁ、強い方ではないかもな。
シズル:ほら、座りましょう。
朔次:うん。

0:朔次、ベンチに腰掛ける
0:顔に疲れが浮かんでいる

シズル:疲れた?
シズル:ここ、少し坂道が急だもんね。
シズル:ゴツゴツした石の階段も、きついよね。
シズル:ちょっとした山登りの気分。
シズル:朔次さん、登山とか、普段しないでしょう?
朔次:……。
シズル:朔次さん?
朔次:お前、登山なんてするのか。
シズル:私?
シズル:そうねえ、学生の頃には、何度か行ったかな。
シズル:数える程度だけどね。
シズル:アウトドアが好きな友だちがいたの。
朔次:うん。
シズル:最初はきついだけで、全然楽しくなかった。
シズル:でも、山頂から見る眺めは良いものね。
シズル:私、高いところは割と好きなの。
朔次:そうだったな。
朔次:よく高いところに登りたがってたよな。
朔次:俺とは大違いで。
シズル:ふふ、朔次さんは高いところ、駄目だもんね。
朔次:ああ、無理だよ。
朔次:この高さでも、体が震える。
シズル:あら、大丈夫?
朔次:止まらないんだよなぁ、震えが。
シズル:大丈夫、大丈夫よ。

0:シズル、朔次を後ろから抱く

朔次:シズル。
シズル:地に足を付けていれば安心よ。
シズル:重力に逆らわなければいいの。

0:朔次、咄嗟にベンチから立ち上がる
0:やや、足取りがおぼつかない

朔次:赤いなぁ……。真っ赤だ。
シズル:コキアのこと?
朔次:うん。
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