泡沫のジュブナイル
天花:卒業しました。
店長:えっ?
天花:高校。
天花:卒業式だったんです、今日。
店長:ああ、なるほど。
店長:そっか、もうそんな時期か。
店長:おめでとう。
天花:ありがとうございます。
天花:それと、店長。もうひとつ。
店長:ん?
天花:私、来月から東京に行きます。
天花:あっちの大学に通うので。
店長:……寂しくなるなぁ。
天花:本当に思ってます?
店長:思ってるよ。
店長:だけど、来るべき時が来たな、って感じでさ。
天花:……。
店長:来月からだって?
店長:準備とか、色々あるんじゃないの?
天花:すぐに終わります。
天花:そんなに荷物、ないから。
店長:はは……良いね。

0:店長、手元の壊れた腕時計に視線を戻す

店長:そっか。
店長:天花(てんか)も大学生か。

天花:(N)そう呟いて、手元の壊れた腕時計に視線を戻す。
天花:いつもの作業台で、いつも何かを直している。
天花:私は、この町が嫌いだ。
天花:田んぼばかりで、虫が多くて、顔も知らないおばさんが、訳知り顔で話しかけてくる。
天花:好きなところがあるとすれば、空の美しさと、店長のいる「修理屋」くらい。

店長:……そこが良いんじゃない?
天花:え?
店長:「何もない」ってところが魅力なんだよ、田舎は。
天花:そういうものですかね。
店長:まぁ、天花みたいな子には、確かに物足りないかもなぁ。
天花:どういう意味ですか?
店長:いや、別に。
店長:学校はどう? 楽しい?
天花:いつも通りです。
天花:可もなく不可もなく、って感じで。
店長:悪くはないってことだね。
店長:それなら良かった。
天花:良くもないですからね。
店長:うーん、でも進歩はしてるでしょ。
店長:前はほら、「話が合わない」とか「つまらない」とか、そんなことばっかり言ってたじゃん。
天花:……そうでしたっけ。
店長:うん。
店長:俺が学生の時は、くだらない話して、遊び呆けてたけどなぁ。
天花:友だちいないので。
店長:俺がいるじゃん。
天花:……。
店長:はっは、何て顔だよ。
天花:えっ、どんな顔してました?
店長:「何でお前みたいな冴えないオッサンとこの私が友だちなんだ釣り合うわけねーだろ」って顔。
天花:……嘘でしょ?
店長:半分冗談。
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