誕生日の輪舞
「誕生日の輪舞」

登場人物

タクシー運転手 男
お客① 田舎から出てきた母親
お客② プロポーズする男
お客③ 会社をクビになった女
お客④ 東京駅へ急ぐ女
お客⑤ プロポーズされる女


舞台の二か所に明かり。
一つはタクシーの運転席、もう一つは後部座席。
運転席の方が、少し前に設定。実際の位置関係より離れている。
間に柱(明かりの外に設置)がある。


一場 田舎から出てきた母親

柱の中から運転手が出てきて、運転席のスポット内へ
運転手、運転席に座る
後部座席のスポットにお客①が現れ、ドアが開き、乗り込む

運転手「ご利用ありがとうございます。どちらまで?」

お客①「ここに行きたいんですけど(紙を渡す)」

運転手「承知しました。荷物後ろに積みましょうか」

お客①「大丈夫です。これだけなんで。さっき東京駅についたところで・・・。娘がそこで働いてるんですよ」

運転手「娘さんに会いに? (紙をみながら)IT大手ですね」

お客①「ええまぁ。キャリアウーマンっていうんですか?もう会うの5年ぶりくらいなんですよ。仕事が忙しいっていって全然帰ってこないから」

運転手「じゃぁ、娘さん喜びますね」

お客①「どうなんでしょう?いつも電話で、結婚しろ結婚しろって見合いの話ばっかりしてましたから。嫌がるかもしれません」

運転手「かもしれないって、来ること伝えてないんですか」

お客①「さぷらいず、っていうんですか、娘の誕生日にね。好物の「おはぎ」を作ってね。そうだ!(荷物からおはぎの入ったパックをとりだし)おひとつどうぞ」

運転手「いやいやいや、娘さんの分、減っちゃいますよ」

お客①「大丈夫大丈夫。たくさん作ったんですよ」

運転手「実は甘いものが苦手でして」

お客①「あら、そうですか」

運転手「お気持ちだけ、ありがとうございます」

お客①「今回は見合いなんてしなくてもいいって伝えようと思ってね」

運転手「え?いいんですか」

お客①「まぁ、孫の顔みたかったですけど、あの子、もしかしてお付き合いしてる人がいるのかもってね。娘の人生ですからね。何が幸せかは、娘が決めればいいと思って」

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