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饅頭こわくない

饅頭こわくない
作　松永　恭昭謀

登場人物
　男
　女１
　女２
　
　
　
とある劇団のアトリエ。
テーブルが一つあり、その上に饅頭が一つ置かれている。
女１がその前に険しい顔で座っている。
男がやってくる。

男　遅くなりました。
女１　（挨拶する）
男　暑い暑い。
女１　駅から歩いて？
男　今日はヤバいですよ。
女１　だから車に乗ってくって？ってラインしたのに。
男　すいません。間に合うか分からなくて。（女２）さんは？
女１　コンビニ。台本の印刷しに。
男　おっ、台本できたんですね。
女１　みたい。
男　もうよみました？
女１　ちょっとだけね。
男　どうでした。
女１　いい感じだと思うけど。
男　この前の公演、かなり評判良かったですからね。ところで。
女１　なに。
男　饅頭食べないんですか。
女１　饅頭。
男　そう、饅頭。
女１　なんで？
男　なんでって饅頭は食べるものでしょ。
女１　そう、食べるものなのに、食べない。
男　食べない？　なぜですか。
女１　聞きたい？
男　いや、なんでかなって。
女１　そう。確かになんでかなってなるよね。食べる？
男　ボクですか？
女１　そう、食べてよかったら食べる？
男　（女１）さんは食べたんですか。
女１　それは重要？
男　重要？
女１　そう、私が先に食べたかどうか。それが重要？
男　現時点でですね、怖いなと。
女１　怖い？
男　よく分かりませんけど、食べるとなにか良くない感じがします。
女１　なんで？
男　その質問がですよ。ただならぬオーラ。
女１　やっぱり私が悪いの？
男　２択ですか。イエスかノーか。
女１　私が悪いのかどうか。
男　食べるかどうかじゃないんですか。
女１　食べるか、食べないの？
男　ボク、二択苦手なんですよ。
女１　そうなの？
男　あれは……もう２、３年前ですか、バイト先にですね、女の人がいたんですけど、まあ、かわいかったんですけど。まあ、かわいい女子なんて彼氏いますよ。すべからく。

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