雪魂アグノイア 第一話
■■■⑦であり①
  【大きくノイズが聴こえ続ける】
  【肉と骨を咀嚼する音】

  僕が彼を食べている。

僕「終わる事なく繰り返される虚しい業と理」

■■■②
  【雪を踏みながら歩く音】

  膝まで埋まるほどの雪の中を歩いている。

この世界に白く降り積もる白い結晶。
別の世界を知る者は『雪に似ている』と言っていた。
僕は雪を知らない。

  【雪の中に倒れる音】

  雪の地面を背にして仰向けに倒れる。
  深い溜め息。

この世界に降る結晶は、灯火の尽きた魂の残骸。

此処は食うか食われるかの世界。
自分に近い魂ほど美味に感じる。

そして一度食ってしまえば、次は更に美味い魂でなければ飢餓を抑えられない。
食うのをやめたくとも呪縛からは逃れられない。

  【遠くから争う声が聞こえる】

僕はもう食いたくない。
食うからには食われる恐れもある。
なのに、衝動に駆られて食ってしまった。

僕は誰にも気付かれずに静かに潜んでいたい。
やがて魂の灯火は消えて、空から降る結晶に変わる。
そうだ、僕は雪になりたい。

■■■③
  【雨の音】

この世界を洗い流そうとする液体。
別の世界を知る者は『雨に似ている』と言っていた。
僕は雨も知らない。

この世界に降る液体は、長く浴びると魂が溶けてしまう。
降り出してしばらくすると辺りには誰も居なくなる。

はずだった。

誰かが倒れている。
食われかけて逃げて来たのか、鼻から上の顔がない。

僕は彼を背負って濡れない場所まで連れて行った。

  【舌なめずりする音】

助ける気なんてなかった。
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