あらすじ
奥澤瑞希、草柳凛、三波蒼衣の三人が通う学校は『学園』と呼ばれ、正式名称は、羽華聖斗(わかせいと)音楽学園。小学校、中学校、高等学校、大学、大学院と一貫の音楽学校で、これまでにも一流の音楽家たちを多数輩出している。途中編入は認められているが、ハードルはとても高く、逆に学年が上がるごとに実力のない者は篩い落とされていくので、学園を去っていく者はあとを絶たず、更に海外留学中の学生もいるので生徒の数は非常に少ない。
奥澤、草柳、三波の三人は共にピアノ科であったが、三波は小学五年の時、ヴァイオリン科に転向。また、三人は小学校から入学しており、入学当初からの友人である。
彼女たちは学園の寮で生活をしているので、家族のような関係。ただ、奥澤は入学当初から才能を発揮し、現在も特待生扱いのため、草柳と三波とは別の寮に住んでいる。
規則では、寮の部屋の合鍵は作ってはいけないことになっているが、奥澤はそれを破って勝手に合鍵を作り、草柳と三波に渡している。
特待生は基本的に中学に入学するとプロと見做され、数々のコンクール、演奏会、講演会等に学園の顔として出席しなければならず、奥澤も例外ではない。
槙原時子は学園側の人間で、奥澤が中学に上がり、頻繁に外に出るようになった時から付き人をしている。
三波は特待生まではいかずともかなり優秀な生徒であったが、三年前に持病のため、他界しており、その直後に奥澤は寮の部屋で自殺未遂事件を起こしている。
そういう世界の、小さな日常を切り取ったもの。
この前提を観客が既知か未知かは、どちらでもかまわない。