モテ男への道
傾城恋愛学入門〜初級編〜



    傾城恋愛学入門〜初級編〜
     
    「モテ男への道」


                        作 中島 奈美
   


  見るからに悪魔といった格好をしたルシフェル陽子が、火にかかった大きな鍋をかき回している。 
  後ろの棚には、魔法書やら色とりどりの怪しい薬ビンやらが並んでいる。
  陽子は、片手に分厚い本を広げて、真剣な表情で、時折ビンの薬を入れたり、
  呪文を唱えたりして、なにやら怪しい魔法の液体を調合しているようだ。
  そこへ、今風の格好をしたちょっと気の弱そうな青年、由良遠馬(ゆらとうま)が、
  しょんぼりした様子で入ってくる。 
  彼は、しばらく陽子の様子を眺めながら、なかなか話し掛けられずにボーっと突っ立ている。
  陽子は、彼の存在がまったく気にならないという風に鍋に集中しながらも、
  ごく当たり前のように遠馬に話し掛ける。

陽子   どうしたの、・・元気ないわね。 何かあったの?

遠馬  (待ってましたという感じで、目をウルウルさせながら)陽子さん、
     実はボク・・・・・振られたんですよ。

陽子   ふられた・・・・・相手は人間?

遠馬   ・・・ええ・・・一応・・・

陽子   女?

遠馬   ・・・はい・・・ボクは、ノーマルですから・・・

陽子  (鍋に集中しながら) で、・・・なんていって口説いたの?

遠馬   ですからね、ごく普通に・・・(ちょっと照れながら)「付き合ってください」
     って・・・・・

陽子   トウマ君! それは君、初期設定が間違ってるわ。

遠馬   初期設定?

陽子   君に普通は似合わない。もっと濃いキャラ狙わないとね。

遠馬   はぁ・・・濃いキャラ・・ですか・・?

陽子   トウマ君、あなた・・・もっと自分を知らないとダメね。(にっこり笑う)

遠馬   ・・・・・・・・・はい。

陽子  (また鍋に集中する) で、 今日は何の用かな?

遠馬   ですから・・・悩みの相談に・・・

陽子   悪いけど、確定申告のことなら、相談には乗れないわね。 
     あいにく私は、税理士じゃないし・・

遠馬   そんなことわかってますよ!
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