あらすじ
『これは、物語の迷宮。記憶の海に浮かぶわたしの一欠片。』――眠れぬ高校生ケンヂの前に、毒舌の案内人・かま猫が現れ、失われた「絶対忘れない」という言葉の起点を探す旅が始まる。恭子、先生、眠り女の証言は食い違い、タイムカプセルと“裏”の儀式が封じた過去が滲む。屋上の視線、理科室の夜、法廷ごっこ、ダンスとタンゴ。記憶は標本のピンのように時間を留めるのか、世界は脳が見る幻か。嘲笑と祈り、嫉妬と愛憎の渦中で、少年は野田ネリの名と向き合い、復讐と赦しの境界を踏み越えてゆく。これは、忘却に抗う青春のミステリーであり、優しさへ辿りつくための、痛切で鮮烈な目覚めの物語。観客はタンゴの鼓動とともに、笑いとざわめき、悪夢と祈りを往復しながら、ひとつの問いに導かれる――「わたしの世界は、だれの記憶で編まれているのか」。光と影が交錯する舞台で、言葉は刃に、抱擁は鍵に変わる。幕が上がるたび、眠りの扉はもう一枚、開く。