第三ラジオ体操の夏
 「第三ラジオ体操の夏」
                     作 結城 翼

★登場人物
未来(みく)・日之本学園少年ラジオ体操クラブ員。絵日記をつける。
ヒカル・・・・日之本学園少年ラジオ体操クラブ員。愛嬌。文学少年。病弱。
ナルミ・・・・日之本学園少年ラジオ体操クラブ員。陽気な写真大好き少女。
ケン・・・・・日之本学園少年ラジオ体操クラブ員。活発で口が悪い体育系。
大沢・・・・・日之本学園少年ラジオ体操クラブ員。後に日之本学園ラジオ体操愛好会を結成。
先生・・・・・日之本学園教師。自由をモットーにしているが・・・。
子供たち・・・日之本学園の子供たち




★プロローグ

        地鳴りが始まる。
        大音響。
        母さん、響子、などと人々がそれぞれの家族の声を呼ぶ声が阿鼻叫喚のように交錯し、高まり「母さーん!」で       パンと切れる。
        蝉の声が聞こえる。幕が上がる。
        旧式の巨大なラジオから、音楽が流れている。
        廃虚の広場らしき中で少年少女たちがラジオ第一体操をしている。
        未来が絵日記を書いている。

未 来:八月十五日。今日も一日クソみたいに暑い。日之本町の空気は乾いてカラカラだ。これは、絶対どこかで雨が降っている   せいに違いない。だってそうでなければバランスがとれない。世の中はどこかでバランスがとれるようにできているんだ と父さんはいつも言っていた。それにしても今日はあの地震や津波が嘘みたいな青い空だ。日之本学園は地震で見事にぶ っつぶれてしまった。でも、子供たちは元気だ。なんてたって、うっとおしい学校だったんだもの。おかげですっきりさ わやか、清々した夏休みだ。いつまでもつづけばいいのに。それにしてもクソ暑い。

        セミの声が大きくなる。一糸乱れず力強くみんな体操をする。
        日記を書き続ける未来。少女が出てきて、古い蛇腹のついたカメラでカシャッ。
        暗転。
        蝉の声が耐え難いほど大きくなって。

Ⅰ少年ラジオ体操クラブ

        ふっと声が消えると、溶明。朝。荒廃した広場。上手に少し土手がある。
        少年ラジオ体操クラブ員たちが無駄話をしている。
        体操の練習をしているヒカル。缶けりしながら茶々入れたりコーチしたりするケン。縄飛びする、未来。
        めいめいスタンプを押したカードを持っている。
        ナルミが、使い捨てカメラで、しきりに写している。ポーズを取ったり、とられたり。
        使いきったらしい。

ナルミ:あーあ。もう終わっちゃった。
ケン :ナルミがバカみたいに写すからだよー。
ナルミ:バカで悪かったわね。写してやらないから。
ケン :ナルミに写されたら、顔腐るっちゃ。
ナルミ:ケン写したら、カメラ、壊れまーす。
ケン :ちぇっ。

        ナルミ、イーをして。

ナルミ:ヒカル。
ヒカル:(体操をやめて)なに。
ナルミ:そんなにはりきって、大丈夫?
ヒカル:うん。今日は調子いいんだよ。熱も出てないし。ほら。
ケン :調子こいてー。後で泣いてもしらねえぞ。
ヒカル:大丈夫だって。・・それにしても暑いねえ。
ケン :朝からこれじゃ、くたばっちまうよな。
未来 :大地震からこっちずっとこれだものね。
ケン :地震か・・
ナルミ:未来いつまでいるの。
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