紅い鳥小鳥紅い実食べた
「紅い鳥小鳥紅い実食べた」  作 結城翼
                
★登場人物
七海・・・・
小夜子・・・
菜摘・・・・
音羽・・・・
真梨子・・・
男・・・・・
少女1・・・
少女2・・・
少女3・・・
少女4・・・

志緒理


Ⅰプロローグ・・誕生・・

        静謐な音楽。
        空間を鳥かごのような鮮烈な紅いパイプが覆う。
        中に白いフロアがある。フロアの左右には、役者が静かに待機するためのイスが2つずつ置いてある。イスの上には白い帽子。        演技に関係ないときは、基本的に役者はここで帽子をかぶって待機する。
        中央奥やや高くなる二、三段の階段。
        その奥に入り口らしきところ。そこから、左右に分かれて出入りすることが出来る。そのほかには入り口らしきものはない。
        入り口の近くにボックスが1つずつ対称的に置かれている。              
        同じく白いボックス状のいすが4つ。中央に並べて配置されている。
        中央ボックスに腰掛けて向こう向きになっている七海。七海は白い帽子をかぶっている。人形と遊んでいるようだ。
        フロアには七海を囲むように、あるものは座りあるものは立ち、風車を吹いている。
        蒼い空間。志緒理14歳の夜。
        やがて、風車がすーっと止まった。

真梨子:風がとまると。来るのよ。あいつが。

        風車が手から落ちる。
        ブルーの照明の中に紅い光が降りてくる。
        同時に鐘の音が響き渡る。
        少女たちがやってくる。真梨子たちは、サイドのイスのほうへ。それぞれ白い帽子をかぶって待機。
        管理人がやってくる。
        管理人が入り口を開ける。
        下から上への逆光の中そのまま中央に立つ。
        音がやや小さくなる。

少女1:扉の向こうに充血したように光る紅い目がありました。大きくなったり小さくなったりして、じっとりと私を見つめています。
少女2:やがてかすれたような声が私を呼びます。
管理人:志緒理、志緒理、志緒理。
少女3:地の中から沸いてでてくるその声は、生臭いにおいを漂わせながら、私の体にまとわりつきます。
管理人:志緒理、志緒理、志緒理。
少女4:気も狂いそうになりそうなほどはきそうな其の声は、眠気を誘うように高く低く私を呼びつつけるのです。
管理人:志緒理、志緒理、志緒理。
少女1:その声は私をからめ取り、私の耳にはもう私の名前しか聞こえなくなり・・・

        かすれたような不快な、志緒理の名前を呼ぶ声が続いていき。

少女2:生臭い夜の闇の向こうには、きゅっとつり上がった、紅い口が開いていました。
少女3:その笑った口からはよこしまな欲望が焼き付くように吹き出して、やがて私の指をとらえるとなま暖かい口の中に含むのでした。
少女4:夜は永遠に長く私は心がぐらぐらしながら静かに死んで行きました。

        男は、扉の外から。

男  :月がきれいだよ。
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